難関「型式証明」を突破! ホンダジェット開発の裏にあった「胸熱」ストーリー

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 ホンダの航空機事業子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company)は、米国東部時間12月8日に型式証明を取得したことを発表した。

ホンダジェットがついに飛び立つ時が来た。29年という長きに渡った開発のクライマックス、米国連邦航空局(Federal Aviation Administration)による「型式証明」を取得したのだ。

 ホンダジェットは米国連邦航空局(FAA)の型式証明取得に向け、FAAによる機体および搭載装置の「機能・信頼性飛行試験」が最終段階にきていた。一連の試験は現在まで全米31州の計54空港で行われ、その他の試験も含めた飛行試験全体では米国内の70ヵ所で計3,000時間を超えているという。

 新規開発の航空機は、この米国連邦航空局(FAA)、欧州航空安全機関(EASA)、そして各国の認証を必要とする(日本では国土交通省航空局の認証が必要)。「型式証明」がなければ、公に空を飛ぶことが出来ない。

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アルプス山脈上空を飛行中のホンダジェット

 航空関連の著作を多数刊行してきたノンフィクション作家の前間孝則氏は、ホンダエアクラフト社長藤野氏への長年の取材をもとに、今年9月『ホンダジェット 開発リーダーが語る30年の全軌跡』を上梓した。

 同書は自動車会社のホンダが航空機の研究を始め、29年の歳月を経て、ホンダジェットが空を飛ぶまでの悪戦苦闘を描いている。苦境に立たされた藤野氏や関係者が手を取り合い苦難を一つ一つ乗り越えて行く胸の熱くなる物語でもある。入社間もない藤野はここに配属され、以後開発の中心としてホンダジェットとともに生きてきた。事業化の見通しが立たなかった時、藤野は転職も考えたことがあるという(前掲『ホンダジェット』)。プロジェクトには紆余曲折はつきものだ。そうして辿り着いたのが「型式証明」取得という最終関門。

 前間孝則氏は、「型式証明」についてこう書いている。「FAAに提出する申請書類やレポート、設計書や図面、数々の書類などの紙の重さの合計は機体の重さに匹敵する」。ちなみにホンダジェットの重量は約4トン。量もさることながら、用紙代だって巨額だ。

 認証の対象になるのは、機体はもちろんのこと、すべての搭載機器、その部品、材料ひとつひとつ、これらの設計計算書、図面、製造設備、製造方法、検査手順、治工具管理、マネジメントの体制、教育システム……。ひとたび事故が起きれば死に直結するだけに、開発者に対する要求は想像を絶する(詳細は前掲『ホンダジェット』参照)。

 こうした関門をひとつひとつクリアし、「型式認証」を取得。ホンダジェットはいよいよ顧客に引き渡される。

「ホンダにとってこれまでにないほどのチャレンジでしたが、型式証明の取得は非常に大きなマイルストーンを達成したと言えます」と藤野は語った。

 米国ノースカロライナ州グリーンズボロ市にある生産工場では、現在25機のホンダジェットが最終組立工程にあり、年末に予定しているデリバリー(顧客への引き渡し)を控えているという。

Book Bang編集部
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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