【手帖】有島武郎の再評価へ文学館が認知度調査を実施

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 小説「生れ出づる悩み」「或る女」などで知られる白樺派の作家、有島武郎(1878~1923)。50代以上なら教科書で読んだという人も多いが、若い世代からは忘れ去られつつある。

 有島の個人文学館である北海道ニセコ町の有島記念館などが昨年11月、インターネット調査会社のモニター会員約1000人を対象に、全国的な認知度調査を行った。その結果、有島を知っている人は35.4%。60歳以上では、知っている割合が知らない割合を上回っているが、50歳代後半では拮抗(きっこう)。45歳未満では7割以上が知らないと回答。作品を読んだことがあるのは13.1%だった。

 有島記念館の伊藤大介主任学芸員は、「来館者と接していると、観光ついでに寄っただけという方が多く、認知度は2割程度かと思っていたので、意外に高いという印象」と話す。文化施設が顕彰作家の認知度調査を行うことは全国的にも珍しいが、「個人記念館の職員は、『知られている』という前提で仕事をしがちだが、施設運営を考える上で重要な材料」という。

 この調査は、日本オラクル元会長の佐野力氏の出資で実施された。調査結果を受け、佐野氏は「複数の博物館施設等と連携して有島武郎の作品や思想の現代的意義を探り、それらを全国的に紹介することで読者層の拡大を目指すプロジェクトの活動資金」として、ニセコ町の有島記念館向け基金に300万円を寄付、「生れ出づる悩み」のモデルとなった画家の木田金次郎美術館(北海道岩内町)に運営資金などとして200万円を寄付した。

 有島記念館では今後、国内外でのシンポジウム実施や、若者向けの絵本、漫画本の刊行などを検討していく。生誕140周年となる平成30年に向けて、「若い世代に親しみを持ってもらう工夫や、シンポジウムでの話し合いから、有島の現代的意義も浮かび上がってくるのでは」(伊藤さん)と期待する。

産経新聞
2016年2月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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