『蚕』
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『蚕 絹糸を吐く虫と日本人』畑中章宏著
[レビュアー] 産経新聞社
〈明治時代から昭和の初めまでの短いあいだ、蚕と日本人の関係は驚くほど濃密なものだった〉。世界遺産の「富岡製糸場と絹産業遺産群」は養蚕業の輝かしい達成だろう(とくに経済的に)。でもそれは養蚕史の一面にすぎない。著者は民俗学的手法で分析を試みる。記紀の時代までさかのぼって資料を調べ、蚕に関わりのある神仏を訪ね歩き、東日本一円の生糸が運ばれた「絹の道(シルクロード)」をたどる。伝承されてきた民間信仰や芸能の表情から、「お蚕さま」が人々にとってどういう存在だったのかに迫っていく。蚕という鏡に映し出される日本文化の姿とは-。(晶文社・1800円+税)