【「撮り鉄」鼎談(拡大版)】小学館ウイークリーブック『鉄道ペディア』刊行記念企画【前編】

特集・インタビュー

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小学館ウイークリーブック『鉄道ペディア』(全50巻)創刊を記念して、
同誌編集担当の元『鉄子の旅』編集長・江上英樹氏と、
凸版印刷株式会社「鉄道研究会」メンバーが鉄道の魅力と、
『鉄道ペディア』への期待を語り尽くす。
男たちのマニアックな会話が熱い!

高野洋一(凸版印刷)×後藤昭彦(凸版印刷)×江上英樹(『週刊 鉄道ペディア』編集)
撮影:柴田和彦
高野洋一(凸版印刷)×後藤昭彦(凸版印刷)×江上英樹(『週刊 鉄道ペディア』編集)

「列車から見える以上、向こうからも列車が見える」

江上 江上英樹です。小学館時代は『IKKI』の編集長として漫画「鉄子の旅」シリーズ(菊池直恵・ほあしかのこ作)に携わってきましたが、まさか退職後に、小学館の鉄道関連媒体に関わることになるとは思ってもいませんでした。1958(昭和33)年生まれの57歳ですが、まずお年からお伺いしてもいいですか。

高野 高野洋一です。44歳になります。

後藤 後藤昭彦です。江上さんと同世代、56歳です。

江上 お二人は凸版印刷の「鉄道研究会」のメンバーとお聞きしました。一般の企業にそんなサークルがあるのは珍しいと思います。

高野 会員は30人ほどですが、全員が集まる機会は、年に一度の旅行ぐらいですね。

後藤 何となく集まった機会に鉄道を語ったり、「どこかへ行きましょうか」と数人単位で出掛けてみたりといったところが“サークルとしての活動状況”です。

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江上 最近の“全員合宿”はどちらでしたか。

後藤 大井川鐡道です。井川線の奥まで行きました。

高野 「乗り鉄」「撮り鉄」それぞれなので、行った先では結局、“分派行動”になりましたけど。

江上 「鉄子の旅」に「旅の案内人」として登場する横見浩彦さんは、全路線完乗・全駅下車というとんでもない「乗り鉄」でした。世代によっても好きなジャンルは異なると思いますが、お二人は「何鉄」になりますか。

高野 オールマイティですが、基本は「撮り鉄」です。鉄道模型を作っているもので、現物の施設・設備、部品類にも興味がありますし、廃線跡めぐりもします。

後藤 私も「撮り鉄」です。特に山から見下ろす俯瞰ふかんのショットが大好きで。「どこに列車がいるの?」と聞かれるような作品が撮れた時がうれしいですね。山が見えれば、向こうから列車が見えるはずだと。

江上 そういえば、広田尚敬ひろたなおたかさん(鉄道カメラマンの重鎮)が以前、「新幹線から見えるんだから、富士山頂から新幹線が見えるはずだ」とおっしゃってました。ぜひ、山頂から新幹線を撮りたいと。

後藤 分かる!

高野 山に立っている高圧鉄塔は気になりますよね。

後藤 点検員が行き来しますから、間違いなくたどり着ける道がある。そういう意味では、高圧鉄塔の直下というのは、使いやすい俯瞰撮影ポイントのはずなんです。

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高野 ただし、木が茂っていて見通しが効かないケースも多々ある。

後藤 けれど鉄塔をよじ登るわけには、絶対にいきませんから。大学生の頃は国土地理院の5万分の1の地図を片手に、山道をたどって歩いてました。20キロぐらいは平気でしたね。もっともいまは、車ばかりです。

江上 私は生まれは湘南地方・藤沢市なのですが、鉄道好きになったのは、幼稚園から小学校時代を過ごした大宮(さいたま市)の頃で、原風景は、大宮駅北側の大栄たいえい橋になります。

高野 跨線橋ですね。

江上 ええ。子ども心に「とにかく大きな陸橋だ」という印象があって。あそこの上からだと、大宮の広い構内が全部見渡せる。親父にカメラを借りて、一日中歩道に座り込んで、気になる列車が来るたび撮りまくってました。いま見ると、大栄橋は新幹線の高架の下をくぐるようになっちゃって、「こんなにみすぼらしい橋だったっけ」と思うんですが。

後藤 その頃だと、SL(蒸気機関車)もまだ残ってましたよね。

江上 ええ。

後藤 川越線の「キューロク(9600形)」、夕方の客車列車を引いていた。

江上 昼間は気動車なんだけど、通勤・通学時間帯だけ長い編成を引っ張ってました。

高野 うらやましい。お二人は「一回り」上なんですよね。SLの現役時代に間に合ってます。

後藤 かろうじて。ただ、なかなか現場へは行けなかった。

江上 私も同じ思いです。あと一回り上に生まれていたら、「ヨン・サン・トウ(昭和43年10月の国鉄ダイヤ大改正)」以前の鉄道風景を現認できてたはず。

後藤 私も、あと10年早く生まれていればと……。

高野 どの世代も、思いは一緒なんですね。

江上 483系(のち485系)特急の「ひばり」(上野~仙台間)、「やまばと」(上野~山形間)、「やまびこ」(上野~盛岡間)、「あいづ」(上野~会津若松間)、そして「ヨン・サン・トウ」で583系に変わった「はつかり」(上野~青森間)などを、東北本線の踏切でよく見てました。特に夕方上ってくる特急「つばさ」(上野~秋田間)のキハ82系、あれはたまりませんでしたね。天橋立あまのはしだての観光客がするように、股ぐらの間から逆さに見るのが好きで。なぜだか迫力がアップするんです! ただし、警察官に、「線路に石を置いてるんじゃないか」と思われないようにひやひやしながらでしたが。

後藤 「つばさ」(2号)にはキハ81も使われてましたね。「はつかり」から回されて。

江上 その後、「ひたち」(上野~平(現・いわき)間)から「いなほ」(上越線経由で上野~秋田間)でしたか。

後藤 ですね。あのボンネットが好きでした。

江上 中学生ぐらいだと、遠出は難しかったですよね。それでも行きたいところがあると、親父の名刺の裏に「家出ではありません」と、一筆書いてもらって。

後藤 急行券が100キロまで100円の時代でした。

江上 ええ。上野から郡山経由で磐越西線に入る「ばんだい」(上野~会津若松・喜多方間)でしたか、夜行の急行に乗って只見線へ行ってみたり、大垣夜行(東京~大垣間、のち快速「ムーンライトながら」)に乗ってみたりと。

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後藤 私は、故郷の深谷市の線路端で特急「とき」(上野~新潟間)を見ている子ども時代の写真が残ってます。高崎線の列車がルーツ。旅客も貨物も長い列車が多かったので、その轟音ごうおんが「かっこいい!」と感じてました。

高野 私は家の近くを走っていた川崎市の南武支線(尻手~浜川崎間)の電車です。それと、新幹線の運転士が「かっこいい!」とひたすらあこがれて。東京駅のホームで後をついて歩いたこともありました。

後藤 男の子って、とにかく一度は鉄道に興味を持ちますよね。大人になるまでそれを持ち越しているかどうかはともかくとして。

江上 以前「いさみやロコ・ワークス」(鉄道模型の老舗)のオヤジさんが言ってたんですが、「男はマゾだから、線路しか走れないという融通の効かなさに惹かれるんだ」と。

後藤 分かるような分からんような……。

高野 うちの妻は「バスで旅行することが理解できない」といいます。バスは日常の延長になるから、非日常を求める旅にはふさわしくない。だから旅は鉄道、飛行機がいいと。

後藤 飛行機はともかく、非日常に浸るには、確かに鉄道は最高ですね。最近は「今日は写真を撮らない」と決めたら、「呑み鉄」に徹してます。

高野 私も「撮るなら呑むな」「呑むなら撮るな」。車窓をつまみに呑むのは楽しみです。車だとそうはいかないですからね。

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高野洋一(たかの・よういち)
1971年、神奈川県川崎市生まれ。映像企画部勤務。好きな路線は、東海道本線、京浜急行。好きな車両は、EF58、旧型国電、京急600形(2代)。鉄道愛好歴、おそらく40年(物心ついたときから)。

後藤昭彦(ごとう・あきひこ)
1959年、埼玉県熊谷市生まれ、深谷市育ち。出版印刷部門営業担当。好きな路線は岩泉線(2014年春に廃線になってしまったが)、中央本線。好きな車両は、キハ22、旧型国電。鉄道愛好歴、半世紀以上。

江上英樹(えがみ・ひでき)
1958年、神奈川県藤沢市生まれ、大宮市(現さいたま市)育ち。1982年、小学館入社以来漫画編集者として働き2014年退社。ブルーシープ㈱を立ち上げ、今日に至る。路線を問わずスイッチバック命。

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【刊行予定】
2016年2月16日火曜日創刊。2号は3月1日発売。以降毎週火曜日発売。
【価格】
各巻680円(8%消費税込)
*創刊号は、専用3穴バインダーが1冊ついて、特別価格500円(8%消費税込)

Photograph:柴田和彦

小学館 本の窓
2016年3・4月合併号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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