【話題の本】80年代「若者」バイブル 『気まぐれコンセプト 完全版』ホイチョイ・プロダクションズ著

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【話題の本】80年代「若者」バイブル 『気まぐれコンセプト 完全版』ホイチョイ・プロダクションズ著

[レビュアー] 藤井克郎

■世相や流行、風俗の変遷が一冊に

 広告業界にうごめく人々を狂言回しに、世のトレンドを4コマ漫画で切り取った「気まぐれコンセプト」と言えば、1980年代の若者世代にとってはバイブルのような存在だった。81年に始まった連載は、現在も「週刊ビッグコミックスピリッツ」で続いているが、その35年間を彩る作品の数々が984ページもの大著になった。

 ギャグのセンスと味のある画風も楽しいが、特筆すべきはその時々の世相や流行、風俗の変遷がこの一冊に込められていることだ。例えば、1987年には携帯電話のでかさを皮肉っているが、2013年ではスマホに夢中で北極まで歩いて行ってしまう。80年代に登場するキャベツ畑人形やハウスマヌカンなどは、今の人は注釈付きでもよく分からないのではないか。

 昨年3月末で作画担当の松田充信さんが引退し、そのはなむけの意味で企画されたが、2月中旬に発売されたその日に重版が決まるほど反響は大きいという。「40代以上には懐かしがって読んでもらえると思うが、若い人にも、これを一冊持っていると会社の先輩と話を合わせられますよ、と言いたいですね」と、自身も20代という小学館の編集担当、稲垣麻衣子さんはアピールしていた。(小学館・2600円+税)

 藤井克郎

産経新聞
2016年3月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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