横浜市長・林文子 ビジネスマンにこそ「情緒」が必要だと語る

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 横浜市長・林文子さん(69)が3月17日に放送された「林修・世界の名著」に出演し、永井荷風の『ふらんす物語』(新潮社)を紹介した。ビジネスウーマンとして合理性の塊のようなイメージがある林市長だが、推薦した名著は情緒溢れる一冊で、林市長の意外な一面が明らかになった。

■市長として『ぼく東綺譚』は……

『ふらんす物語』は青年時代の作者・永井荷風自身のフランスでの体験を綴った名著。異国情緒溢れる新鮮な描写により耽美派文学の源流ともいわれる。林市長が同書を手に取ったのは13歳の頃。小学生のころから浅草の女剣劇に夢中になり、江戸情緒に感化されたと語る。そしてまず先に『ぼく東綺譚』(新潮社)に触れ、荷風の情景描写の美しさに夢中になった。しかし『ぼく東綺譚』は内容が内容だけに市長の立場からはお勧めしづらい、と苦笑いした林市長。番組司会の林修先生(50)は「この作品も後ろの方は『ぼく東綺譚』と変わりませんよね」と笑った。

■もの書きになるために生まれたような

 同作は掌編集となっているが、林市長が一番好きなのは「晩餐」だと語る。「晩餐」ではフランスでの日本人同士の宴席など卑俗な部分が描かれるが、物語の最後主人公は宴席を抜け出し外に出て街を歩く。林市長はその場面の描写が「まことに美しい、えっと思うような美しい文章で終わる。余韻を残した終わり方で、ここは女性にものすごく人気のある部分だと思う」と荷風の文章の美しさを熱く語った。番組では荷風の美文をいくつも取り上げ紹介。林先生も「習慣が『生恥』と名付けた言葉の中には、何と云う現わしがたい悲愁の美が含まれているのであろう。」という一文を取り上げ、「悲愁の美」なんて使いますか?と荷風の言葉の選び方に驚きをあらわした。林市長は「これで28、9(歳)ですよ、もう本当にもの書きになるために生まれたんでしょうね」と絶賛した。

■一見役に立たない「情緒」を心が求める

 林市長は「こんな素敵な文章を書く日本人がいたということを知ってほしい」と語る。同書で著される情緒は、普段難しい行政用語で固められた書類ばかり読んでいる自分が読むと、心が解き放たれたような、飛翔するような感覚になるという。情緒的なものは人生にすぐに役に立つわけではないが、外国車のセールスウーマンをしていたころ、お客様は車のスペックやデータではなく、車にも豊かな情緒や体験を求めているのだと気付いたと話し、生活の上澄みのような「情緒」も大切なものだと語った。

「林修・世界の名著」はBS-TBSにて毎週木曜日よる11:00から放送中。

Book Bang編集部
2016年3月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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