中江有里が胸を打たれた絵師「葛飾応為」働く女性アナウンサー島津有理子も「ずぼらさ」に共感

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 4月13日放送のNHK総合「ひるまえほっと」に女優で作家・書評家としても知られる中江有里さんが出演し、月に一度の「ブックレビュー」コーナーで三冊の本を紹介した。

 この日中江さんが紹介したのは、

16歳の語り部』雁部那由多[著]津田穂乃果[著]相澤朱音[著](ポプラ社)
』朝井まかて[著](新潮社)
感情類語辞典』アンジェラ・アッカーマン[著]ベッカ・パグリッシ[著](フィルムアート社)

 の三冊。

640『16歳の語り部』雁部那由多[著]津田穂乃果[著]相澤朱音[著](ポプラ社)、『眩』朝井まかて[著](新潮社)、『感情類語辞典』アンジェラ・アッカーマン[著]ベッカ・パグリッシ[著](フィルムアート社)

■5年生で被災した子どもたちが語り始めた

『16歳の語り部』は小学5年生の時、東日本大震災で被災した子どもたちが5年間の歩みと未来について自分たちのことばで語り下ろした一冊。彼らが東日本大震災をどう見ていたか、非常に生々しく描かれている、と中江さんは紹介した。助けを求めてきた大人を振りきって津波から逃げたことや、支援物資の取り合いをする大人たちの姿を目撃したなどのエピソードが語られる。中江さんは「ショッキングだなと思うところもありましたが、彼らはあの日何が起こったか理解できた最後の世代。幸せや一日一日大切に生きていくことなど、この震災を経て感じたことが書かれ、16歳の子どもたちがそういったことを感じるところにまで至ったんだなというのが、はっとさせられる」と評した。そして東京に住み、被災をしていない青年も登場するが、彼の気持にも共感すると話した。「まさに寄り添ってくれる一冊だと思う」と同作を紹介した。

■働く女性が共感する葛飾北斎の娘

『眩』(くらら)は葛飾北斎を父に持つ女絵師、葛飾応為を描いた一冊。みずからの画風を追い求め、人生すべてを絵に投じた女絵師、応為の知られざる生涯を2014年の直木賞受賞作家・朝井まかてさんが描いた作品。「葛飾北斎という非常に大きな存在の娘として生まれた葛飾応為という女性の人柄が、鮮やかに描かれている。応為が残した作品がどんなふうに作られてきたのかについても、非常にリアルに描かれていて、迫ってくるものがありました」と中江さんは評した。そして「吉原格子先之図」という応為の晩年の作品を紹介した。光と影のバランスに重きを置いた同作によって応為は「江戸のレンブラント」と称される。

 また当時の女性としては珍しく、工房で絵を描くことに打ち込み、家事や料理もせず、食事は総菜屋で買ってきて食べていたというエピソードを紹介。アナウンサーの島津有理子さん(42)は「働く女性として耳がいたい、私もです」と共感しながら読み進めたと告白した。中江さんは「そんな時間があるなら描いていたい、情熱の塊のような人だったんです」と話し、応為の絵に対する一途さ、純粋さに胸を打たれたと語った。

■特殊だが実用性の高い類語辞典

『感情類語辞典』は悲しみ、好奇心など、人間のさまざまな感情を表す言葉を、きめ細かく集めた新感覚の類語辞典。中江さんは「類語辞典が好き。ものを書いたりするとき参考にしたりする」と告白。同辞典はアメリカの小説家向けの創作支援サイトで実用性を高く評価され、書籍化された。ひとつの感情について、60から90の類語が収録されている。中江さんは「これがなんの役に立つのかというと、私は人間観察をするのが好きなんですが、ぱらぱら読みながら、人を見たときに、その人の人柄とか内面みたいなものをこの言葉でどんなふうに表現するか考える。それがすごくおもしろいんですよ。執筆とかに携わっている方にとっては、非常に実用的でもあるんですが、一般の方が読んでも面白いと思う」と薦めた。また自分が思っていることは言葉にできたときにはじめて実感するとも語り、感情の正体を掴んで演じる女優ならではの感想も述べた。

 「ひるまえほっと」はNHK総合で月曜から金曜11:05からの放送。「ブックレビュー」コーナーは月に一度放送される。http://www4.nhk.or.jp/P2542/

Book Bang編集部
2016年4月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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