幕末維新に関わっていたのは日本人だけではない 外国人の視点から見た維新が興味深い

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 4月17日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に『幕末維新を動かした8人の外国人』(東洋経済新報社)の著者小島英記さんが出演した。同書は幕末から明治維新に至るまでの通史をこの時代に日本に関わった8人の外国人の視点で記した歴史ルポルタージュだ。聞き手の高市佳明アナウンサー(43)は明治維新は日本人だけが動かしていたわけではないとよくわかったと語った。

■薩長史観だけではわからない

 著者の小島さんは元日経新聞の記者で歴史小説も書いている。小島さんは「幕末維新史というのは薩長史観に代表されるような志士達の時代だということなんですが、それだけでは全体像が見られない。横から見たほうが全体像がよく見える、そういえば外国人が見た維新史は見たことがない。彼らの列伝を書きながら幕末維新史を見たらよくわかるのではないか」と同書執筆の動機を語った。

■ペリーの先見性

 そして取り上げた8人の外国人について解説した。はじめは鎖国政策に風穴を開けたペリー。ペリーは日本の近代化を予見していた、と書かれている。小島さんはペリーは真面目に日本人を研究していたと語り、日本人の未来について「他国の人々によって作られた新製品に対する日本人の執拗な好奇心と、それらを自分たちの用途に同化させてしまう能力からすれば、やがて日本は世界の最も栄えた国々と肩を並べることになる。そして工業生産力を巡り日本は近代国家の強力な競争相手になるに違いない」と記していた文章を紹介した。小島さんは「大変な未来を見通す力だったと思います」とペリーを評した。

■「唐人お吉」は事実無根

 アメリカ初代駐日総領事のハリスに関して高市アナウンサーは、ハリスが立役者となった日米修好通商条約が不平等だったと教科書で習ってきましたが、と問う。それに対し小島さんは「時代を考えなければいけない。治外法権を認めたのが不平等だと言われるが、日米お互いに治外法権を認めていた。時代背景として押し付けられていたわけではなく幕府も歓迎していた」と語った。そして「唐人お吉」の話題にも触れ、「彼はいやらしい爺さんみたいに思っている人もいるが、事実無根。潔癖な人だった」と敬虔なハリスの素顔について語った。

■日本人は事実を見なければいけない

 そのほかにも番組では日露和親条約を締結したプチャーチンや、幕府を最後まで支援したロッシュ、などの人となりを紹介した。読んでいくと彼らは単に日本を利用しようとしていた外国人ではないことが伝わってくると高市アナウンサーは感想を述べた。小島さんは最後に「日本人は素晴らしいと称揚することによってひとつの方向に持って行こうとする動きがあるが、海外の状況を理解する必要がある。虚心坦懐に事実を見なければいけない」と外国人の目を通して日本を見ることは今の時代にも必要な視座だと語った。

 NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。コーナーはNHKのウェブサイト(http://www4.nhk.or.jp/r-asa/340/)でも聞くことができる。

Book Bang編集部
2016年4月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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