千年前からこの国は常に揺れていた 大地震を人はどう捉えたのか 鴨長明『方丈記』に学ぶ「無常観」

テレビ・ラジオで取り上げられた本

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本三大随筆のひとつとして知られる『方丈記』に注目が集まっている。熊本での大地震以降、新聞各社の社説でも取り上げられ、4月22日にはNHKラジオ第1の「すっぴん!」のコーナー「源ちゃんのゲンダイ国語」で作家の高橋源一郎さん(65)も言及した。

■戦乱・災害の時代に描かれた無常観

「ゆく川の流れは絶えずしてしかも本の水にあらず」の冒頭で有名な『方丈記』は仏教的な無常観のもと、乱れた世をどう生きるのか鴨長明の人生観が描かれる。長明が生きていた時代は戦乱の時代。さらに地震や大火事、飢饉に水害も起こり、首都であった京都近辺は荒れ果てていた。「まるで災害の記録のように読める」と高橋さんは紹介し、『方丈記』で描かれた地震の一節を読みあげ、当時何が起こっていたかを解説した。

■マグニチュード7.4の大地震

『方丈記』で描かれたのは元暦1185年の7月9日に起こった「文治地震」。マグニチュード7.4の大地震だったと考えられている。『方丈記』では「山くづれて川を埋み、海かたぶきて陸をひたせり。土さけて水わきあがり、いはほわれて谷にまろび入り、なぎさこぐふねは浪にたゞよひ、道ゆく駒は足のたちどをまどはせり。いはむや都のほとりには、在々所々堂舍廟塔、一つとして全からず。」と描写され、その地震では「土砂崩れ」「地割れ」「津波」「液状化」「建物倒壊」が起こったと描かれている。また日に20~30回も余震が起こり、3ヶ月続いたとも記されている。そして鴨長明は世の人がしばらく前に起こった地震を忘れ、忘れたころにまた地震が起こり大きな被害を受けるというのを繰り返してきたとも書いている。

■この国は常に揺れていた

 高橋さんは「この国は常に揺れていた。心のどこかで(日本は)揺れているんだなと忘れちゃいけないね」と語った。また戦乱や災害を見越して「方丈」(3メール四方)の庵に住んでいた長明を、「鴨長明やるわい」と評した。そして古典を今の時代の視点でみることが大事だと解説した。

■千年前に答えは出ていた

 ネット上では今回の地震を受け『方丈記』を読みなおしたとの声も多く、「地震の予測ができないのは千年前と変わらない」「昔も今も自然災害の前では無力」「執着を捨てることが大事だね……」「災害は肩書も財産も一瞬でなくなる、諸行無常だね」「千年前に答えは出てたんだ」と「無常観」を実感したとの悲痛な呟きが溢れている。

 「すっぴん!」はNHKラジオ第1放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中。高橋源一郎さんは金曜日を担当している。

Book Bang編集部
2016年4月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ニュース