女優の杏「携帯電話の無い時代の働き方を味わった方がいい」80年代を追体験する一冊を紹介

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 女優の杏さん(30)が4月24日放送のJ-WAVEの番組「BOOK BAR」で、「本との出会いは短編から」と題し、奥田英朗の連作短編集『東京物語』(集英社)を紹介した。80年代を追体験できる一冊で若者たちにもオススメだと語った。

■80年代の濃い空気を感じられる一冊

『東京物語』は連作短編集。全ての作品に「1978年4月」のように具体的な年月日が書かれる。杏さんは「おそらく奥田さんの自伝的な作品」と紹介した。名古屋から出てきた青年の20代前半が描かれ、甘酸っぱい恋や仕事の荒波を経験し大人になってゆく。80年代に起こったキャンディーズ解散やジョン・レノン殺害、幻の名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊などがちりばめられ、当時を追体験できる一冊だ。杏さんは「携帯電話の無い時代の仕事の仕方、友人関係のあり方などを味わったみた方がいいぞ」と持論を述べた。当時は仕事上でも友人関係でも、すれ違いは日常茶飯事だったとナビゲーターの大倉眞一郎さんも語った。そして「80年代を見返してて思うんだけど濃いですよね、漫画とか音楽とか映画とかファッションも。国民みんなで同じものを楽しんでいた」と当時の濃い空気を感じられる一冊だと紹介した。

■イヤな気持ちが癖になる

 大倉さんは「なんなんだよと声をあげつつページをめくる」とこちらも短編集『居心地の悪い部屋』岸本佐知子[編・訳](河出書房新社)を紹介した。同書は翻訳家・アンソロジストの岸本さんが集めた12編の奇妙な翻訳短編が並ぶ。とりあげられている作家は11人。どの作品も「奇妙で不条理で不安だったり恐怖だったりざわめきが残るが、読んで止まらなくなったひと続出」だと大倉さんは語る。そして「なんともいえないイヤな気持ちが癖になるので、読み心地はいい。翻訳ものは手をつけづらいが、これは読みやすい。海外ものデビューとして最高じゃないかな」と同書を高く評価した。

■9年目に突入した「BOOK BAR」

 この日のゲストは2月にリリースしたアルバム「TOKYO BLACK HOLE」が話題のシンガーソングライターの大森靖子さん(28)。「なにかを失って気づかせてくれた本」として『かくかくしかじか』東村アキコ[著](集英社)を紹介した。また下北沢の書店B&B店長の寺島さやかさんが『ひとりの記憶 海の向こうの戦争と、生き抜いた人たち』橋口譲二[著](文藝春秋)。
 今回の放送で9年目に突入した「BOOK BAR」。番組のウェブサイトにはこれまでに二人が薦めてきた何百冊という本がアーカイブされている。これを機に二人のセレクションを見直して読みたい本を探すのも一興だ。(http://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/

「BOOK BAR」はJ-WAVEにて毎週日曜0時(土曜深夜)から放送中。

Book Bang編集部
2016年4月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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