銀ちゃん、ヤスら「蒲田行進曲」の“つか組”が34年振りに勢ぞろい つか氏を懐かしむ

文学賞・賞

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 5月31日、都内で新田次郎文学賞(公益財団 法人新田次郎記念会主催)の授賞式が開かれ、受賞した『つかこうへい正伝 1968-1982』著者の長谷川康夫さんを囲み、風間杜夫、平田満ら「つか芝居」の名優たちが勢ぞろいした。

 会場に姿を見せたのは俳優の風間杜夫さん、平田満さん、石丸謙二郎さん、根岸季衣さんら。いずれも70年代の「つかブーム」時に役者として活躍した面々だ。

1左から4人目より平田満さん、根岸季衣さん(前)、石丸謙二郎さん、長谷川康夫さん、一人おいて風間杜夫さん、愛原実花さん

 風間さんと平田さんは、つか芝居の常連として数々の舞台に立ち、映画『蒲田行進曲』では「銀ちゃん」と「ヤス」を演じて一躍脚光を浴びた。「世界の車窓から」のナレーターとしておなじみの石丸さんは、つかさんの舞台に出たことが俳優デビュー。また、現在女優として映画に舞台に数多く出演している根岸さんは、『蒲田行進曲』などのつか舞台でヒロインを演じている。


 会場にはつかさんの娘で女優の愛原実花さんも駆けつけた。愛原さんは昨年から今年にかけてつかさんの名作『熱海殺人事件』で初めて父の作品に出演、ヒロインを務め、風間さん、平田さんとも共演した。

■魔力がある人だった

 今回新田次郎文学賞を受賞した『つかこうへい正伝 1968-1982』は、かつて大ブームを巻き起こしたつかこうへいの黄金期を、数々の証言と徹底した取材によって描き出した評伝。つかさんと日常を共にし、作品作りの現場にいた人間でしか知りえないエピソードや、「口立て」に代表される、独創的なつかこうへいの作劇・演出術が詳細に描き出されている。著者の長谷川さんは、かつてつかさんの劇団で俳優・スタッフとして活動し、つかさんの原稿アシスタントも務めた人物。現在は脚本家・演出家として活躍している。
長谷川さんは受賞スピーチで、

「2010年につかさんが亡くなったとき、故人の遺志もあり葬儀や偲ぶ会は行われなかったので、この本を書いたことで初めて『あぁ、つかさんはもういないんだ』としみじみ噛みしめた。今日こうしてつかさんの娘さん、かつての劇団員の仲間たちが来てくれたのも、もしかしたらつかさんの企みではないかという気がしています」と語った。

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つかさんの思い出を語る風間杜夫さん

 また風間杜夫さんは、つかさんについて、「稀有で突出した才能の持ち主。でも、通り一遍の『良い人』ではない。破たんして、乱暴な人間だったかもしれないが、人を引き付け、虜にし、時代を築いた。そんな魔力がある人だった。長谷川君の本で、僕らが接していたそのままのつかこうへいが活き活きと描き出された」と語り、つかさんとの日々を懐かしんだ。

 つかさんは、1982年に人気絶頂だった自身の劇団を解散。89年に演劇活動を再開するも、それ以後は風間さんらかつての劇団の中心メンバーを起用することはなかった。今回の授賞式は、当時の劇団員たちが34年振りに公の場所に顔を揃える機会となる。

 ただ、この日出席した俳優たちに「久しぶり」という感覚はあまりなかったようだ。今もことあるごとに集まるという「つか組」は、この日のパーティでも“もう一人の主役”の話題で盛り上がっていた。

デイリー新潮編集部

デイリー新潮
2016年6月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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