精神医学界のアイドルは高田純次? 最強の引き寄せ力を持つ「おめでたい人」|あの人の憧れの一冊 第2回

こんな本を読んできた

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 今この国を覆っている、正体不明な疲弊感と諦観。相変わらずうつ症状を訴える人の数は多い。患者さんたちの話を聞いていて思うのは、「考えても仕方のないことに囚われてしまっている人が多い」ということだ。考えても考えても答えが出ることはないのにそこから離れることができず、心身ともに疲れ果ててしまう、という人が多い。

 それと真逆な思考・行動パターンを持つのが、今回新刊のテーマにした「おめでたい人」だ。「おめでたい」という言葉には相手をややバカにしたニュアンスがあり、ネガティブな発言に使われることが多いが、本来は「めでたい」のだから良い意味を持っていたはずである。

 私が考える「おめでたい人」たちには、こんな特徴がある。

・考えても仕方ないことは考えない
・考えるよりまず行動する
・周囲の批判は気にしない
・世間が決めた「正解」を信じない
・やってダメならすぐ次に行く

 スティーブ・ジョブズも孫正義さんも報道されていることを見る限りこれに当てはまり、歴史上偉業を成し遂げた人にもこの思考パターンを持っていたと思われる人が多い。

 私自身もさまざまな仕事に携わっている。精神科医でありながら映画を作っているというのも私以外、あまり聞いたことがない。私の場合「成功した」とはいいがたいが、そもそもビジネスのあり方を学んだのは、藤田田さんの著書『ユダヤの商法』だ。70年代、ちょうど藤田さんがマクドナルドを日本に持ってきた時期に出版されたものだが、今読んでも決して古くさくない、ビジネスの普遍的な成功哲学が記されている名著だ。今も私の思考の基礎になっている部分も大きい。

 つまり、一度の挑戦で成功することなどなく、何度か挑戦し続けることが重要だ、という当たり前のことが語られている。ダメと思えばダメで、おめでたい気持ちでトライすれば何が起きるかわからない、という真理である。藤田さん自身がいい意味で「おめでたい人」の典型例ではなかったか、と考えている。

 精神科医の仲間で「理想のメンタルを持つ人は誰か」という話をするとよく挙がるのが、タレントの高田純次さんの名前。「テキトー男」「ミスターいい加減」などと呼ばれるが、そのぬけっぷりは、冗談抜きで病気から遠いメンタルの良いサンプルである。

 「おめでたい人」は多くの人が深刻に考えこんでしまうような状況下で、「バナナが食べたい」などと発言してしまう、いわゆるKYな種族のことでもあり、たとえばホリエモンのように収監されるような事態になってもまず「今より健康的な生活を送ることができてやせられるかも」と考える発想力を持っている。

 それがいいとか悪いとかの話ではなく、こうした思考パターンの持ち主は精神を病むことが少なく、また自分が考えたことを実現していく力が強い、ということを伝えたかった。

 考えるより行動する人たちだから、大多数の人が「無理だ」と言って二の足を踏むようなこと・恐れることにも挑戦もしやすく、結果も出る。つまり、考えすぎて四の五の言うだけで何もしない人が多い社会において、失敗や周囲の意見を気にせずどんどん行動する「おめでたい人」が思考を実現=成功しやすいのは当然のことだ。

 もちろんそうした思考パターンは持って生まれたものであることも多いが、日常的なトレーニングで身につけることもできる。本書ではそのトレーニング法もいくつか詳しく紹介しているが、ひとつ例を挙げると、多くの人が言うことと逆のことをあえて発想する、という練習である。

 たとえば、世間である有名人のことが叩かれまくっていたとする。誰もその人物を助ける人がない状況であえてその人の長所を挙げてみる。人でなくてもいい。車でも企業でも国でも多くの人がけなしているものをあえて「すばらしい」と考え、何がすばらしいのか具体的に考えてみる。
 こうした「逆張り」発想トレーニングが凝り固まった思考パターンを崩し、「世間の正解を信じない」というおめでたい人の重要な思考要素を得る準備になる。

 科学も文学も「多数決」ではない。とんでもないことを言うたったひとりの科学者の主張が次代を築く礎になることもある。それがいま「非常識」だと言われるものだったとしても。

 そんな「真理」をおめでたく信じることができたら、読者の「引き寄せ」も始まっている、と私は信じている。

和田秀樹(わだ・ひでき)
60年大阪生まれ、東京大学医学部卒、精神科医。国際医療福祉大学教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。
www.hidekiwada.com

『「おめでたい人」の思考は現実化する』和田秀樹/著
考えても仕方ないこと、考えすぎてません?
人間関係の悩みや将来への不安に立ちすくんでしまう人を「肩の力を抜いて、とりあえず一歩踏み出してみよう」と元気づける、人気の精神科医の「おめでた思考」のすすめ。

Book Bang編集部
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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