【手帖】ユニークな才能登場 「壁にもらったワクワク感…それがきっかけ」

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ありま三なこさん

「be絵本大賞」からユニークな才能が登場した。『ウォールズ』で大賞に輝いたありま三なこさん(29)である。同賞は子供たちに夢と勇気と不思議を語る新しい児童文学を生み出そうと創設され、今回で8回目となる。選考委員である秋元康、茂木健一郎、武田双雲の3氏の絶賛を受けての受賞だった。

 なくなることが決まった壁をめぐって、いろいろな生きものが思い出を語り出す。ベルリンの壁に象徴されるように壁にはネガティブなイメージがこびりついているが、ありまさんはそれを粉砕してこれまでにない新しい世界を提示する。ここでは明かさないが、最後の展開は見事である。

 インテリアコーディネーターを志して武庫川女子大学の生活環境学科で学んだありまさんは、卒業制作で仕掛け絵本に取り組み絵本の可能性に気付いた。人生で初めて心からやりたいことを見つけたありまさんは、就職した会社を1年で退社し、絵本の専門学校に入学して創作を始めた。

「部屋の壁にもたれかかったとき、壁の向こう側から音が聞こえたんです。何の音だろうと思い、向こう側の世界を想像し始めた。壁にワクワク感をもらったといえばいいのかな。それが本書のきっかけです」

 自らを「あまのじゃく」という。「失敗をしてもいいし、恥をかいてもいい。それで笑いがとれればOK。〈変わってるね〉が最高の褒め言葉だと思う」

 絵本というと、ほっこりした絵柄とストーリーが多いが、「それはほかの人にまかせ、何も背負っていない自分は、描きたいように描き、自由に想像をふくらませて物語をつくりたい」と話す。『ウォールズ』は絵柄も物語も「あまのじゃく」な彼女にしか創造できないものだ。「答えはどこにもありませんから、自由に解釈していただきたいですね」

『ウォールズ』はフジテレビKIDS刊、発売は扶桑社。価格は1300円+税。

産経新聞
2016年6月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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