世界には翻訳できない言葉がある 謎の単語「ポロンクセマ」とは? 女優・中江有里がお勧めする3冊

テレビ・ラジオで取り上げられた本

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

 6月8日放送のNHK総合「ひるまえほっと」に女優で作家・書評家としても知られる中江有里さん(42)が出演し、月に一度の「ブックレビュー」コーナーで3冊の本を紹介した。

 この日中江さんが紹介したのは、梅雨の時期でも読後爽やかな気分になれる以下の3冊。

『向田理髪店』奥田英朗[著](光文社)

『「私」を受け容れて生きる―父と母の娘―』末盛千枝子[著](新潮社)

『翻訳できない世界の言葉』エラ・フランシス・サンダース[著](創元社)

■過疎の町ならではの親密さ

『向田理髪店』の舞台は北海道。かつては炭鉱で栄えた過疎の町で、次々と起こる騒動を、理髪店店主の目線でユーモラスに描いた連作短編小説。中江さんは過疎の町で起こる騒動、「息子が仕事を継ぐ」や「外国人の嫁が来る」「訳あり美人ママがスナックを開店する」「映画の撮影が行われる」などの小さなエピソードが心にしみると語る。小さな町だからこそ住人が家族のようで、「関係性の密度が濃い。その濃さが苦しいと思う部分と、逆にそういう人間関係に救われたりもする。そういうエピソードが本当にうまく描かれているんですよね」と小さな町で生きる人々の人生の機微が描かれていると紹介した。そして「住んでいる所のマイナス面ばかりが目に入ってくるが、実はそうではない部分、濃密だからこそ分かり合える、言わなくても通じ合い助け合う、そういう人間関係が実はこの町のよさだったんじゃないかなと気付く」と語り、読み終わったあとにすごくほっとする1冊だと評した。

■人の3倍も4倍も波乱万丈

『「私」を受け容れて生きる―父と母の娘―』は彫刻家、舟越保武の長女として、障害のある息子の母として、絵本の編集者として生きた著者、末盛千枝子の波乱に満ちた人生をつづった自伝エッセイ。末盛さんは現在75歳。皇后さまのご講演録『橋をかける―子供時代の読書の思い出』(文藝春秋)を手がけた編集者でもあった。中江さんは末盛さんの人生は「人の3倍も4倍もいろんなことを経験されているよう。優しい表情から想像がつかない波乱万丈な壮絶な人生だった」と感想を述べた。末盛さんは42歳で夫と死別し、そして再婚、その再婚相手の介護とみとり。さらには経営していた出版社の倒産や移住先の岩手での東日本大震災など次々と困難が襲いかかる。しかし末盛さんはそれらをゆったりと受け止め、受け入れる。中江さんはそこが「じーんと胸に来る」と語った。また「前向きな生きる覚悟が伝わってくる。困難があるからこそ幸せと感じられる」と話し、読んだ方それぞれに訴えかけられるものがあるんじゃないか、としみじみと語った。

■「ポロンクセマ」とは?

 世界には他の言語に訳すときに、ひと言では言い表せない特有の言葉がある。『翻訳できない世界の言葉』は、そんな翻訳できない言葉を集めて、ユニークな解説とイラストでまとめた単語集。作者はイギリス在住のイラストレーター。世界各国に住んだ経験があり、感性に引っかかった様々な言葉を集めイラストをつけて紹介している。中江さんは「知らない言葉がいっぱい。読んでも楽しいし、眺めても楽しい」と語りながら掲載されている単語をいくつか紹介した。「ポロンクセマ:トナカイが休憩なしで疲れず移動できる距離」フィンランド人にとっては身近なトナカイを使った用語に「あそこだったら1ポロンクセマだよみたいに、知ると使いたくなる」と楽しみ方をあげた。また日本語もいくつか収められている。「わびさび」や「ぼけっと」などが紹介され番組MCの島津有理子アナウンサー(42)は「外国の方もぼーっとすることあるかと思うんだけど、どんな言葉を使っているか逆に知りたい」と同書を読むと話が弾むと紹介された。

 今回の3冊はどれも読み終えたあと心がほっこりする3冊で、中江さんは「梅雨時期ちょっとじとっとした気持ちになると思うんですけど、そういうときにぜひ本を読んで、心を爽やかにしていただきたいな」とコーナーを締めた。

ひるまえほっと」はNHK総合で月曜から金曜11:05からの放送。「ブックレビュー」コーナーは月に一度放送される。

Book Bang編集部
2016年6月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク