新川優愛「毒親って愛情との紙一重」結婚や子育てに自信をなくす

テレビ・ラジオで取り上げられた本

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

 6月25日放送のTBS「王様のブランチ」のブックコーナーで第155回直木賞にノミネートされた湊かなえさんの『ポイズンドーター・ホーリーマザー』湊かなえ[著](光文社)が紹介された。番組MCの新川優愛さん(22)は同作を読み、結婚や子育てに対し自信をなくすほどのインパクトを受けていた。

■イヤミス女王が「毒親」を描く

 嫌な読後感を残すも、その衝撃に心が奪われる“イヤミス”の女王として知られる湊さん。デビュー作『告白』で本屋大賞を受賞。その後も続々とショッキングな作品を生み出すミステリーの名手。最新作『ポイズンドーター・ホーリーマザー』は偏った愛情で娘を支配する母と、支配される娘の心の裏の裏まで描いた「毒親」ミステリー。親に全てをコントロールされてきた女優が主人公。テレビカメラの前で母親のことを「毒親」だと告白し、それが原因で悲劇が巻き起こる。イヤミスの女王、湊かなえさんの真骨頂とも言える作品だ。

■テーマが大事

 VTRに登場した湊さんはミステリーを書くうえでのこだわりを語った。「“今回のテーマ”をすごく考える。それが前に出ないようにどんな見せ方をして、自然に物語に入ってきてもらい、最後にあっと思ってもらうかを考える」と物語の核となるテーマが大事だと話した。今作は我が子の人生を全て支配しようとする「毒親」がテーマ。色々な方向から親子関係を見てゆく時に「毒親」問題は避けられないと湊さんは語る。「全く正しい人というのは出てこない。嫉妬や僻みを持っていていいんだと気付いて見つめ直してゆけたらいい」と同作に込めた思いを語った。

■ちゃんと子育てできるのかな……

 新川さんは湊作品のファンだという。6本の短編が入った同書を読み進めて行くうちに「毒親ってこうかなと思っていたのが、だんだん本当に毒親だったのかな。じゃ毒親って何だろうとか、愛情との紙一重な部分がすごく垣間見えて、何が正しいのかっていうところもわからなくなったんです」と心境の変化があったと語る。そして結婚や出産に憧れや夢をもっていたが、ちゃんと育てられるのかという不安も出てくるほど「グサっときます」と同作の衝撃を語った。

■本物の毒親って?

 番組解説者で早稲田大学文学学術院准教授の市川真人さんは「親が子どものためにと思ってやったことが毒にしかならないとか、子どもの立場で読んでもおもしろいし、親の立場を想像してもおもしろい」と自分の親子関係を振り返りながら読んでも面白いと解説した。そして「じゃあ、本物の毒親ってね、誰のことなの」という同書の中の一文を紹介し、そこを考えながら読むと自分の人生について考える一冊になると薦めた。

 また話題の実用書をとりあげる「ハウツーブックン」のコーナーでは、最新号で鎌倉での素敵な過ごし方を提案した雑誌「Hanako」(マガジンハウス)をもとに新川さんが鎌倉をめぐった。

王様のブランチ」はTBSにて毎週土曜日9:30から放送中。

BookBang編集部

湊かなえ(みなと・かなえ)
1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。他の著書に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などがある。

Book Bang編集部
2016年6月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク