ゲスな最高神ゼウスが浮気をしまくるのは理由があった 古代ギリシャのリアル

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 7月13日、NHKラジオ第1の「すっぴん!」に作家で古代ギリシャ神話研究家の藤村シシンさんが出演した。藤村さんは日本ではあまり知られていないギリシャ神話の神々の素顔について書いた著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)が昨年出版され話題となっている。

■『聖闘士星矢』に影響されて

 藤村さんは高校時代に見た漫画『聖闘士星矢』(集英社)のアニメに感化されてギリシャ神話を学び始めたという。それまで日本史を履修していた藤村さんが古代ギリシャ史を学ぶ大学に入るため、履修科目を世界史に変更しようとしたとき、アニメに影響されて人生を棒に振ってはいけないと教師に止められたという。だがその後東京女子大学と大学院で古代ギリシャ史を研究し、祭儀を再現したイベントの開催や著書も執筆することとなる。インターネットやTwitterでもアカデミックな内容をわかりやすく解説し人気を博し、現在は東京国立博物館で開催されている特別展『古代ギリシャ-時空を超えた旅-』の公式サポーターも務めている。

■最高神ゼウスはなぜ浮気症なのか

 著書『古代ギリシャのリアル』ではギリシャの神々の履歴書が掲載されており、この日もギリシャ神話の最高神ゼウスがなぜ浮気症なのかについて語られた。一般的に神様というと人の見本になるような道徳的な存在だと考えられるが、なぜギリシャ神話では浮気ばかりしているゼウスが最高神として愛されているのだろうか。藤村さんはゼウスの人となり(神となり?)の成り立ちが「逆」だと解説した。ゼウスは浮気症なのに愛されているわけではなく、愛されていたが故に浮気症になったというのだ。

 古代ギリシャは複数の都市国家の集まりで、各都市に王家があった。それぞれが他の都市に対し優位を保つため、自分たちの血筋は最高神ゼウスの血を引いていると主張していたのだ。そのため各都市の神話を俯瞰で見ると、ゼウスは各所で浮気をしているとみえてしまうのだという。ゼウスは自分から好んで「ゲス」な行為をしていたわけではなかったのだ。

■ビビッドな古代ギリシャ

 また藤村さんは白く静謐なイメージのある古代ギリシャが実はビビッドな色彩に彩られていたとも解説した。パルテノン神殿が彩色を削り落されていたという驚愕の逸話を披露。さらに吹きだす血などの新鮮なものを全て「緑」と表すことや、海を「ワイン色」、羊の群れを「紫」と表現していたことなど古代ギリシャの特殊な色彩感覚について言及した。

 特別展『古代ギリシャ-時空を超えた旅-』は東京国立博物館平成館にて6月21日から9月19日まで開催中。

すっぴん!」はNHKラジオ第1放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中。水曜日の担当はダイアモンド☆ユカイさん。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年7月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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