[クリープハイプ]尾崎世界観 ブレイク前の鬱屈とした時代を半自伝的小説に

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 7月16日放送のTBS「王様のブランチ」のブックコーナーで第二の「火花」との期待の声も高いロックバンド・クリープハイプのボーカル尾崎世界観さん(31)のデビュー作『祐介』(文藝春秋)がとりあげられた。

■半自伝的小説

 クリープハイプは2012年にメジャーデビュー。武道館公演も成功させ、スターダムを駆け上がった。2013年にはSMAPの51枚目両A面シングル「ハロー」の作詞作曲を尾崎さんが担当しており、その文学的な歌詞にも注目が集まっている。

『祐介』は尾崎さんの半自伝的小説。タイトルとなっているのは彼の本名だ。ミュージシャンとして世に認められるまでには様々な苦悩と挫折を経験してきたという尾崎さん。今回の小説では「祐介」が「世界観」に成長してゆく過程を物語として描いた。番組では、名前を変えたことによって、その時の自分を切り離した感覚が今はあると話し、「どこに行っていいか迷っていた自分がまだいるんじゃないか。今回はその自分を書ききって決着をつけたいと思った」と訥々と語っていた。

■苦しい中でも喜びをみつける

 主人公は全く売れる兆しのないバンドマン。好きな音楽で夢に向かっていたはずなのに大事なものを次々と失い、夢に追い詰められていく。ライブには人が集まらず、メンバーとの結束はばらばら。尾崎さんは当時の心境を「夢を追っているのか、夢に追われているのかわからなくなっていた」と告白した。そんな状況でも夢を諦めなかった理由について小説の冒頭で触れている。「どんなに汚いものでも、それが自分のなかから出てきたものだと思ったら妙な愛着が湧いてしまう」という一文をあげ、「人間って苦しいなかでもちゃんと喜びをみつけられるんだな」と当時を振り返っていた。

■他人の夢ってこんなに薄汚く見えるんだ

 同書を読んだ番組MCの谷原章介さん(44)は「すごく真っすぐな言葉を一つ一つ、自分の言葉としてつむいでいく方」と感想を述べた。そして自分も仕事がなく「酒ばかり飲んでいた1年間があった」と告白し、本の中で描かれるうっ屈とした感情に共感を示した。

 番組解説者で早稲田大学文学学術院准教授の市川真人さんも、主人公がライブハウスのトイレでバンドメンバー募集のポスターを見て「他人の夢ってこんなに薄汚く見えるんだ」と感じるシーンが「本当にいい一節でした」と絶賛した。

 また話題の実用書をとりあげる「ハウツーブックン」のコーナーでは、カメラ特集として世界一「写ルンです」を使う写真家奥山由之さんの写真集『BACON ICE CREAM』(パルコ)やアクションカメラ「GoPro」の使い方が紹介された。

王様のブランチ」はTBSにて毎週土曜日9:30から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年7月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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