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- つかこうへい正伝 1968-1982
- 価格:3,300円(税込)
7月20日、第38回講談社ノンフィクション賞が発表され、『つかこうへい正伝 1968-1982』の受賞が決まった。同作は先日発表された新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞に続く受賞となり、ノンフィクションの賞を3賞受賞することは極めて異例。
『蒲田行進曲』『熱海殺人事件』などの作品で知られる劇作家・演出家つかこうへい。2010年に亡くなるまで旺盛な活動を続けたが、その黄金期ともいえる時代が、1970年代の「つかブーム」時代。『つかこうへい正伝』は、この時代の「最もつかこうへいらしかった」つかこうへいを、作品や人間的側面など多方面から描き出した評伝だ。
著者はこの時代をつかとともに過ごした脚本家、演出家の長谷川康夫さん。傍若無人な振る舞いをしながらも、信じられないほどの優しさ、繊細さをみせるつかの姿を、長谷川さんは10年以上にわたって間近で見てきた。
『つかこうへい正伝 1968-1982』では驚くべきエピソードが紹介されている。
1979年の9月のこと。著者の長谷川さんは当時、『初級革命講座飛龍伝』という作品の主演を務めることになっていた。
本番に向けて稽古を続けていたある日、稽古場につか(当時31歳)が現れた。つかは、しばらく黙って稽古を見ていたが、突然音響機材を蹴りつけると「おめえら、どういうつもりで芝居をやってるんだ!」と激昂。
つかが役者を罵倒するのは日常茶飯事だったというが、その日の罵倒は30~40分間続き、次第にその怒りの矛先は長谷川さんに向けられ、ついには他の俳優を呼び出して長谷川氏を降板させた。
後日、その芝居の本番直前になり、長谷川さんはつかにこう言われた。
曰く、「お前、本番見るのつらいだろ、ちょっと東京離れてろ」――。そう言ってつかは金を長谷川さんに渡した。長谷川さんはその独りよがりの気遣いに戸惑いながらも、一人で新潟の温泉宿に行き、つかの原稿を清書する作業をしたという。
にわかには信じがたいエピソードだが、かつてつかのもとで活動していた俳優の三浦洋一は、なんと本番当日に主役を降ろされ、受付に回されたことがあったそうだ。つかは、「友だちいっぱい呼んでるのによ、あいつ、受付やってたんだから」と嬉しそうに周囲に話していたという。
本書ではこのようなつかのエピソードが随所にちりばめられている。
傍若無人な振る舞いをしながらも、時に信じられない優しさを見せる。その作品にも特徴的に現れる、両義的かつ逆説的なつかの世界だ。
今年はつかこうへいの七回忌。次々とその作品が再演されている。劇作家・演出家つかこうへいは、今も強烈に人を惹きつけてやまない。
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