直木賞作家・辻村深月と“社交の殿堂” 東京會舘の運命的な関係とは

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 9月3日放送のTBS「王様のブランチ」のブックコーナーに直木賞作家の辻村深月さん(36)が出演した。最新作『東京會舘とわたし(上)旧館・(下)新館』(毎日新聞出版)が取り上げられ、辻村さんと東京會舘の運命的な関係が明かされた。

■「おかえりなさいませ」

 東京會舘は東京丸の内に大正11年に誕生した国際社交場。数々のパーティーや記者会見、結婚式などが行われ、芥川賞・直木賞の受賞者の記者会見も行われる。現在は2019年の営業再開を目指し、丸の内の本館では建て替えが行われている。

 辻村さんが「本当に書きたかった物語」だという今作。番組ではその理由が明かされた。辻村さんは直木賞受賞前、結婚式を東京會舘であげていたという。その後直木賞を受賞した際、会見のために訪れると、會舘のスタッフは辻村さんのことを覚えており、「おかえりなさいませ」と言われたというのだ。辻村さんには縁の深い運命的な場所だということが明かされた。

■実際のエピソードを盛り込んだ

 同作は大正から平成の激動の時代、會舘で働く人やその時代を必死に生きた人たちを描いた人間ドラマ。辻村さんは東京會舘に寄せられるお客さんからの感謝の声に注目し、サービスをした側のスタッフと、サービスを受けたお客さん、両者に取材を重ねたという。そうして集めた感動のエピソードが同作の着想の基になっているという。

 また日本初の本格的なフランス風クッキーをお土産として提供したのも東京會舘。その開発秘話が語られる「お仕事小説」としての側面もあると辻村さんは解説した。

 番組解説者の早稲田大学文学学術院准教授の市川真人さんは同作の感動ポイントを「スケールの大きさ」とあげた。「物語の始まりは1923年、ほぼ100年前。そこから2代、建物が建て替わる中で様々な人が関わって、色々な人生や出来事が描かれていく」と紹介。そして「どんな人でも感動する話は、そんなにない。ただ、これだけ色々な人生が描かれていくと、誰しもどこか自分のことだと思うことに出会える。スケールの大きさがこの小説のいいところ」と評した。

 現在東京會舘系列のレストランでは『東京會舘とわたし』刊行を記念し、物語の中で登場したメニューや手土産が提供されている。
https://www.kaikan.co.jp/special/tkwatashi/

「王様のブランチ」はTBSにて毎週土曜日9:30から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年9月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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