稲垣吾郎「バイトのままババアになってもう嫁の貰い手もないでしょう」ダメ男のセリフにニヤリ

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 SMAPの稲垣吾郎さん(42)が司会を務める読書バラエティー「ゴロウ・デラックス」に9月8日、第155回芥川賞・直木賞受賞者の村田沙耶香さん(37)と荻原浩さん(60)が出演した。

■作者と主人公は別物

 村田さんの受賞作『コンビニ人間』(文藝春秋)はコンビニ勤務18年、36歳未婚の女性が主人公。そのコンビニで婚活目的でアルバイトをはじめたダメ男との出会いを通じ、物語は急展開を見せる。コンビニでしか生きられない非常に変わった主人公を描くことで、「普通」に就職をし恋愛をしている一般の人々こそがグロテスクであり、ヘンテコであることが浮き彫りになる。

 村田さん自身が今もコンビニでアルバイトをしていることが受賞後大きな話題となった。一見作者と主人公が同一に見えてしまう設定だが、村田さんは年齢とコンビニで働いていること以外共通点はあまりないと語る。荻原さんは「読者は(本の)中の人間と作者を同一視する」と語り、自身も登場人物と同一視されてしまうことがあったという。自分もそんな経験がある荻原さんでさえも今作が「あまりにリアルなので作者イコールなのかなって思ってしまう。罠にはまってしまいます」と設定の妙を賞賛した。

■登場人物の似顔絵を描いておく

 村田さんは小説を書く前に登場人物の服装や髪型、身長、体重、誕生日などを設定し、似顔絵まで描いて用意していると明かすと、荻原さんも同じように登場人物の設定を決め、似顔絵も描いておくという。2人は作中の人物の関係性において、お互いの視点の高さは大事なこと、と設定の重要さに意気投合し「意外に共通点ありますね」と笑い合っていた。

 また荻原さんは『コンビニ人間』について「セリフがすごく上手い。人間は理路整然と喋らないが、小説だとついつい説明しようとして硬くなってしまう。(自然なセリフ)それが本当に上手い」と賞賛した。

■ゴロウさんダメ男に

 番組内で登場人物のダメ男が主人公に向かって言うひどいセリフを朗読した稲垣さん。「バイトのままババアになってもう嫁の貰い手もないでしょう。あんたみたいなの、処女でも中古ですよ。薄汚い。俺は男だから盛り返せるけど、古倉さんはもうどうしようもないじゃないですか」とカメラ目線で読み上げた稲垣さんは「これいいね」とニヤり。稲垣さんのサディスティックな一面が垣間見えた瞬間だった。

■ベテランの技が生み出した「圧倒的な読み心地」

 荻原さんの受賞作『海の見える理髪店』(集英社)には誰の人生にも訪れる家族を喪失する痛みと、その先に灯る小さな光を描いた6作の短編が収められている。表題作でもある「海の見える理髪店」は海辺の小さな町で理髪店を営む男性のもとに若い男性客が訪れ、対話を重ねる2人はかけがえのない関係であることが判明してゆく。切なく胸に響く感動の物語だ。

 直木賞選考委員の宮部みゆきさんは今作を「圧倒的な読み心地のよさと、心に残る短編集だった。ベテランの熟練の技に大変心を打たれた」と高く評価した。元コピーライターの荻原さんは「ストーリーや構築する世界には好き嫌いがある。だったらせめて一個一個の言葉をちゃんと磨けば、文章を読んでて気持ちいいねと思ってもらえたらいいかと」と文章へのこだわりを解説した。

 村田さんは同作のなかのある一行を読むと「今までの光景ががらっと変わる。短編のだいご味を見た」と力説し、その一行をみたときに「これがものすごくいい短編だとわかる」と評した。

ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜0:58から放送中。来週のゲストは建築家の隈研吾さん。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年9月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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