ビートたけしが道徳の教科化に「先生が喜ぶ答えを言う子どもを形成するだけ」と疑問を呈した一冊

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 女優の杏さん(30)とナビゲーターの大倉眞一郎さんが毎週1冊ずつ本を持ちより紹介するJ-WAVEの番組「BOOK BAR」。9月25日の放送では杏さんはビートたけし(69)が道徳について考えた一冊、大倉さんは身分を偽りイスラム国の勧誘を取材した一冊をとりあげた。

■非道徳的なたけしが道徳について考える

 この日杏さんは『新しい道徳 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか』北野武[著](幻冬舎)を紹介。同書は稀代の天才・ビートたけしこと北野武が、「日本人にとって、『道徳』とは何か?」を考察した一冊。

 杏さんは北野さんのイメージは道徳に寄り添う立場ではなく、「なんだよ、道徳なんて」という側のイメージがあったと打ち明ける。たしかにビートたけしとして登場したころは道徳をひっくり返すような芸風があった。この本でもそのような観点で道徳が語られており、2018年にもはじまろうかという道徳の教科化に疑問を呈する。

■道徳の「正解」を教えても…

 北野氏は道徳にはつっこみどころがたくさんあり、画一的な寓話や個人の感情に委ねるような教え方で大丈夫なのかと警鐘を鳴らす。同書の冒頭で北野氏は自分の話でさえもうのみにせず、モラルや道徳について自分で考える事が大切だと述べており、紹介を聞いた大倉さんも「どう考えますか?という授業をやってくれればいいけど、これが正しいですという授業は道徳には無いと思う」と同意をあらわした。

 しかし学校では正解不正解を提示しなければならない。そうなると道徳に関するテストでは、先生が喜ぶ答えを言う子どもを形成するだけだ、という北野氏の意見に杏さんは「確かに。これを言ったら怒られるという…色々考えさせられます」と頷いた。

■イスラム国幹部に身分を偽り近づいた女性

 大倉さんは「この場合、取材相手を騙すのは許されるのか?」と『ジハーディストのベールをかぶった私』アンナ・エレル[著](日経BP社)を紹介した。同書はフランスの女性ジャーナリストが自分の身分を偽り、過激派組織「イスラム国」の幹部へと接触した戦慄のルポルタージュ。彼女はネット上でプロパガンダを行うISIS幹部とフェイスブックを通じて知り合い、「未来の妻」としてシリアへ来いと迫られる。フランスを旅立った彼女を待っていたのは……。

 大倉さんはISIS支配地域で多くのジャーナリストが殺されるなか、偽名を使ったこのような取材方法も「これはしょうがないのかなあ」と唸る。その結果彼らの用いる勧誘手段が白日のもとに曝される。彼らは現実とはかけ離れた理想を語り、脅しも使い女性に対し執拗な勧誘を続ける。彼らの望むような女性を演じた彼女は、次第に被った仮面の下にまで影響が及び始める。大倉さんは「手に汗をべたべたに握るすごいルポです」と絶賛した。

 また3週連続のゲストで今週が最終回のお笑い芸人・水道橋博士さん(54)は『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』春日太一[著](文藝春秋)を紹介。また千駄木の往来堂書店店長・笈入建志さんが『翻訳できない世界のことば』エラ・フランシス・サンダース[著](創元社)を紹介した。

BOOK BAR」はJ-WAVEにて毎週日曜0時(土曜深夜)から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年9月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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