「男と二人で向かい合って食事をするなんてセックスと同じ」モラハラ夫に束縛されたカリスマ主婦は……

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 10月2日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に小説家の村山由佳さん(52)が出演した。村山さんが7月に上梓した小説『La Vie en Rose ラヴィアンローズ』(集英社)について高市佳明アナウンサー(44)が迫った。

■黒でも白でもない自然な村山由佳

『La Vie en Rose ラヴィアンローズ』は夫にモラルハラスメントを受けているカリスマ主婦と、年下の男性との恋の行方を描いた恋愛小説。それまでの青春恋愛小説から一転、2009年に『ダブル・ファンタジー』(文藝春秋)で官能的な性を描き文壇に衝撃を与えた村山さん。

 当時は“黒村山”“白村山”と自分の中で分けていたが番組でこの作品は黒村山かと問われると「このごろ書くことがうんと楽になってきた。黒とか白とか分けずに書けるようになってきた。ほんとうの人間は黒いところも白いところも、純粋なところもどろどろしたところも併せ持ってるのが普通。それをありのままのかたちで書けるようになってきた。黒でも白でもない両方でもあるような一番自然体のわたしだという感じがします。今の私をみてくださいという感じです」と心境の変化を明かした。

■モラハラ夫の束縛も「幸せなんだ…」

 物語の主人公はフラワーアレンジメント教室を開き、マスコミにもとりあげられるいわゆる“カリスマ主婦”。一見なんの不満もない生活にみえるが、実はその陰で夫からモラルハラスメントを受け続けている。全ての行動が夫の監視の下、規定され支配されているが、その生活が「祝福され何一つ間違っていない」と思っている主人公。

 村山さんはモラハラや幼児虐待を受ける側に共通する感情として、やさしい夫や親を怒らせる「自分がいけないんだ」と思ってしまう部分があると解説。傍から見たら逃げればいいと思うような環境でも、正常な判断が利かなくなってしまう。夫に「仕事の打ち合わせだったとしても、男と二人で向かい合って食事をするなんてセックスと同じなんだ」と決めつけられ、門限は9時、予定は3日以上前に時間と場所を報告しなければならないと制約を受ける。そのような環境でも自分は幸せなんだと思いこもうとしている、と主人公の境遇を解説した。

■村山さん自身の“殺意”

 その後主人公は年下のデザイナーと出会い、自分でも気付かなかった家の中にある支配に気付かされる。夫婦関係に疑問を持ち、デザイナーと恋に落ち、逢瀬を重ねてしまう。やがて彼女は初めて夫へ異議を唱え、殺意を抱く瞬間が訪れる。このシーンについて村山さんは自身が抱いた殺意が基になっていると明かす。編集者にその時の心境を話すと、是非それを核に小説をと求められ、それが小説として形になったのが今作だと明かされた。「どれだけ当時の自分の中にあった感覚を思い起こして言葉にするか、そこが勝負でした」と執筆時の苦労を語った。

 物語の終盤で夫婦には衝撃の出来事が訪れ、さらに不倫相手にも幻滅を覚える。同作はきらめくような救済だけの物語ではなく、その部分があるからこそ女性読者からも支持されているという。

 同作についてネット上では「息苦しくて目眩がする」「気持ちがシンクロしすぎて痛い」「前半の布石が後半に全て繋がっている」と読者の心に突き刺さるという絶賛の声で溢れている。

 NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。コーナーはNHKのウェブサイト(http://www4.nhk.or.jp/r-asa/340/)でも聞くことができる。

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年10月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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