本場中国での中国茶器の楽しみ方 愛用し続けた茶器はお湯を入れるだけでお茶になる?!

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 10月16日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に小説家の楊逸(ヤンイー)さん(52)が出演した。楊さんの新著『蚕食鯨呑――世界はおいしい「さしすせそ」』(岩波書店)がとりあげられ、食にまつわるエピソードが披露された。

■クジラのような大食いからカイコのような小食へ

 楊さんは1987年に留学生として来日し、お茶の水女子大学文教育学部を卒業。その後小説を書きはじめ、2008年に「時が滲む朝」で第139回芥川賞を受賞している。小説だけではなくエッセイにも定評があり、今作は中国、日本、世界各地の食をテーマに出来事や気付きを綴ったエッセイ集。

 タイトルとなっている「蚕食鯨呑」とは鯨のように一気に、蚕のように徐々に侵略をするという意味の言葉だが、楊さんはこれを、なんでも鯨のように丸のみにしてしまう大食いだった若い「鯨呑期」と、年を経るにつけ食が細くなり蚕のように細々としか食べられない「蚕食期」と今作のモチーフとして使っている。今楊さんは蚕食期に向かう分岐点にいると前書きで書いている。

■出身地の名物って……

 楊さんの出身地ハルビンには「ロシアパン」なるものが存在するという。ただしこれは日本で言う「フランスパン」のような存在でロシアの特産ではなく、ハルビン独特のパン。大きく鍋蓋のようなサイズがあり、甘い後味が美味しい。しかし楊さんは実家に戻ると「懐かしいんじゃないの?」といつも用意されているが大きすぎて食べきれないと笑った。

 またハルビンには「クアス」という飲み物もあり、酸味の後に甘くなってくるコーラのような炭酸飲料。しかし楊さんは「実家に帰ると必ず飲むが、なくても大丈夫なもの」と苦笑していた。どちらも出身地の名物とは誰にとってもそのようなものなんだと親しみの湧くエピソードだった。

■中国茶器を愛用し続けると

 またお茶に関するエピソードでは中国の江蘇省でつくられる茶器「紫砂壺」を紹介した。保温性に優れており、お茶の香りが茶器に残るという。楊さんが育った街の近所のおじさんたちは一人一個茶器を持ち、長く愛用し続けていたという。毎回必ず同じ茶葉を入れるのがポイントで、そうすると茶器には何もいれなくてもそのお茶の香りがするようになるという。そのためお湯だけ注いでも、まるでお茶を飲んでいるかのように楽しめると中国茶器の楽しみ方を披露した。

 NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。コーナーはNHKのウェブサイト(http://www4.nhk.or.jp/r-asa/340/)でも聞くことができる。

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年10月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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