女優の杏 電通出身者の『自由訳 方丈記』に「メディアで物を持たない生活を語るのは難しい……」

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 女優の杏さん(30)とナビゲーターの大倉眞一郎さんが毎週1冊ずつ本を持ちより紹介するJ-WAVEの番組「BOOK BAR」。10月16日の放送で杏さんは平安末期の随筆「方丈記」の新訳を紹介し、物を持たない生活をメディアで語ることの難しさを語った。

■まるで鴨長明ブログ「方丈記」

 この日杏さんは「800年前のDO IT YOURSELF」と『自由訳 方丈記』新井満[著](デコ)を紹介した。鴨長明の方丈記を新井さんの自由な解釈で訳した一冊。方丈記が書かれたのは平安の末期。地震や火災、飢饉や竜巻などの天変地異が都を襲う乱世の中、無常観を抱えながら方丈(約3メートル四方)の草庵で、長明が思索を重ねながら生活を送る様子が描かれている。新井さんによる新訳が発行されたのは2012年。この時期に方丈記を見直す意義があると考えてのことだった。

 杏さんはNHKの大河ドラマ「平清盛」で源頼朝の妻、北条政子を演じていた。同時代の文学にも興味をもち同書を手にとったという。災害を目の当たりにした長明は物欲や執着を捨てようと出家し隠居をしている。ところがお経を読むのが面倒な日もあるよな、と人間的な感想を漏らすこともある。そして最後には出家したにも拘わらず、方丈で「こだわりの生活」を綴り続けるのは果たして良いことなのか? 残された時間をこんなことに使ってよいのか? と悩む。書くということが「残す」という欲望として表れてしまっているのではないか、とそこまでの素直な心情も綴っている。杏さんは「自由訳で見ると、まるで“鴨長明ブログ”のような感覚で見ちゃう」と笑った。

■電通出身者が物を持たない生活を提唱???

 著者の新井さんは著作活動や作詞作曲、映像プロデュースなど多彩な活動で知られるが、元々は広告代理店電通の出身。「物を売るための電通出身の新井さんが、物を持たない生活を描く方丈記を訳し世に提唱する。ある意味矛盾というか」と矛盾に満ちた人間の面白さに思いをはせた。そして「物をもたない生活の良さをメディアで言うのは難しい。それなのになんで色々薦めてくるの?って。それに社会も回らない……」と無常観をメディアで語る際のもどかしさをあらわしていた。


■性にまつわる異端審問が爆笑の一冊に

 大倉さんは「怒る前にバカバカしくて笑ってしまう」と『ペルーの異端審問』フェルナンド・イワサキ[著](新評論)をとりあげた。中世南米ペルーの首都リマで、異端審問沙汰となった性にまつわる事件を短編小説として構成した異色の作品。筒井康隆さんの推薦文とノーベル賞作家のバルガス・リョサが序文を寄せている。2人の偉大な作家の薦めもあり読んでみた大倉さんは「面白かったあ」と絶賛。

 性的な問題を裁く側の聖職者たちも品行方正とは言い難く、大倉さんは「やってることは全てが茶番」と笑いながら「最後の1、2行でイワサキさんがひっくり返すのが面白い」と薦めた。「悪魔にそそのかされてこんなに欲情してしまいました」なんてことが歴史書にはっきりと書かれているという。人間のおかしさを再確認させてくれる抱腹絶倒の短編集だ。

 また3週連続ゲストで今週が最終回のクリープハイプの尾崎世界観さんが『たった一行だけの詩を、あのひとにほめられたい』豊田道倫[著](晶文社)を紹介した。また三省堂書店の内田剛さんが『タイポさんぽ改: 路上の文字観察』藤本健太郎[著](誠文堂新光社)を紹介した。

BOOK BAR」はJ-WAVEにて毎週日曜0時(土曜深夜)から放送中。

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年10月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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