10月25日放送のNHK総合「ひるまえほっと」に女優で作家・書評家の中江有里さん(42)が出演し、月に1度の「ブックレビュー」コーナーで3冊の本を紹介した。
この日中江さんが紹介したのは、いずれも建物が登場する以下の3冊。
『東京會舘とわたし(上)旧館・(下)新館』辻村深月[著](毎日新聞出版)
『日本から城が消える』加藤理文[著](洋泉社)
『漂うままに島に着き』内澤旬子[著](朝日新聞出版)
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- 東京會舘とわたし 上 旧館
- 価格:1,650円(税込)
■社交の殿堂を舞台にした長編小説
『東京會舘とわたし』は華やかな“社交の殿堂”を舞台に大正・昭和・平成を情熱的に生きた人々を描いた長編小説集。大正11年に創業し、宴会場やイベント会場として長年多くの人たちに愛されてきた東京會舘。中江さんも訪れると「気品があって豊かな気持ちになる」という。
また華やかなだけではなく、大正から昭和にかけ関東大震災を乗り越え、戦争を経てGHQに接収されるという時代に翻弄されてきた建物でもある。それぞれの時代に多くの人が関わり、様々なエピソードが描かれる。中江さんは「登場人物の思いが建物をより一層特別なものにしてゆく」と語り「一章一章しみじみと読める小説」と薦めた。
■老朽化した城は消えてしまうのか
『日本から城が消える』は日本の城の現状がわかる一冊。日本各地にある城のほとんどは戦後に再建されたものだが、50年以上がたち老朽化が進んでいる。また今年は熊本城が地震で被害を受け復旧の目処も立っていない。中江さんは傷ついた熊本城を見てショックを受け、城のもつ精神的な街のシンボルとしての役割に思いをはせたという。
各地の城の再建にあたり文化的な価値を高めるため「木造で本物をつくろう」との声もあがるが、耐震性の問題やバリアフリー化など困難な問題に直面する。このままでは日本から城が消えてしまうのではないか、というのが本書の主張だ。中江さんは「街のシンボルをいかに支えるか。それを考えるうえでこの本を読むと、自分たちの城はどういうものなのか、みえてくるかもしれない」と語った。
■憧れの島への移住の現実とは
『漂うままに島に着き』はエッセイ。東京での暮らしが嫌になり、小豆島への移住を決めた40代独身の著者。イラストレーターの著者により地方移住の顛末が赤裸々に綴られている。中江さんは自身も移住への憧れが「ちょっとある」と告白するも、同書を読むと実際に住み始めるまではものすごく大変なんだなと感じたという。引っ越しにかかるお金の話やイメージと実際の島の生活の違い、得体のしれない虫や植物など自然とのつきあいもリアルに描かれ、中江さんは「私ちょっと無理かなって思ったりしました」と笑った。
しかし移住の疑似体験ができるため、移住の良い部分も味わえるという。そして同書を読むとどこで暮らすにせよ、自分なりの生き方のルールやライフスタイルを考えさせられ楽しめると語り「続きを書いてもらいたい」と続編に期待をあらわした。
今回の3冊は東京會舘、城、島の家と建物がキーになっている。中江さんは建物は「もともと無機質なものだけど人の思いによって意味が加えられ、有機的なものになってゆき、自分の人生に欠かせないもの、身近なものに変わってゆく」と3冊を通しての感想を述べた。
「ひるまえほっと」はNHK総合で月曜から金曜11:05からの放送。「ブックレビュー」コーナーは月に1度放送される。
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