脳はあなたが「思う」より先に「決定」している?! 人に「自由意志」はないのか?

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■心を読み取る装置

 あなたは今、重大な決断をしなくてはならない。それによってあなたの人生も大きく変わる予感がある。慎重にあれやこれやを検討し、思考をめぐらす……。もちろん、考えているのは、「あなた」だ。より具体的には、あなたの「脳」である。

 あなたの「脳」が考えていることは、あなた自身が考えていることだ……と、きっと思うだろう。でも、そうじゃない。今日の脳科学では、本人の気づかぬうちに、脳がいろいろなことをあらかじめ決めていて、あなたはその脳に操られているだけだと言うのだ。いったいどういうことだろうか?

 たとえば、脳のある部位に損傷を受けると、その人の性格や志向まで変わってしまうことが知られている。これまで勤勉で社交的だった人間が、いきあたりばったりで尊大な人間になってしまったりするのだ。
 あるいは犯罪や暴力をおかしやすいタイプには、脳のはたらきに独特の傾向(セロトニンやドパミンの低下など)があることもわかっている。
一方、うつ状態で落ち込んでいた人が、クスリを使って脳のはたらきを変えると、たちまち元気で快活になってしまう。

 つまり、「脳が変われば、あなたは変わる」のだ。

 それなら、脳を探れば、あなたが何を考えているか事前に知ることができるのでは?
まさにその通り! 

 脳の活動をモニターで見る実験によって、このことが確認されている。被験者が自分で意志決定する〈前〉に、モニター上にすでにその反応があらわれているのだ。
 たとえば、あなたが8つの方向(矢印)のどれを選ぶかということまで、あなたが思う前に、わかってしまう。
 脳を見れば、あなたより先に、あなたの心を読み取ることができるわけだ。

■人間に「自由な意志」はある?

 こうした数々の事例は、まさに「あなたが脳に操られている」ことを教えてくれる。あなたの考えや行動は、すべて脳が先に無意識に決めたことを、あなたが「自分」で決めたと思っているに過ぎない。

 このことは、人間には「自由な意志」がない、ということでもある。

 となると、ひどい犯罪をおかした者さえ、脳がやったことなのだから、責任は問われないのでは? 実際、米国の法廷では、こうした主張によって、殺人犯が極刑を免れたケースもある。

 でも、なにかおかしいと感じないだろうか? 
やはり納得できない……しかし、それでは今日の科学的見解に反することになる。

『〈わたし〉は脳に操られているのか 意識がアルゴリズムで解けないわけ』(インターシフト)の著者で神経科医のエリエザー・スタンバーグはあえて、その禁足の領域に突っ込み、著名な脳科学者たちに真っ向から異を唱えていく。

 人間には自由な意志があり、わたしたち自身が意識的に考え、行動を決定できる。
 そう著者は主張する。

 その理由についてはぜひ本書で確かめてほしいが、ひとつ見逃せない論点がある。
「人間の心はアルゴリズムではない」――という主張だ。

■人工意識は誕生するのか

「わたしたちの脳(心)は、アルゴリズムによって動いている」――それが、今日の脳科学の主流派の見解だ。

 つまり、脳はコンピューターのようなもので、その回路がわたしたちの考えや感情・行動を生み出している。人工知能もやがて人間の脳に追いつき、意識や心を持つようにさえなると予測する科学者も少なくない。

 これは人間社会の未来にかかわる大きな問題だ。心や意識もアルゴリズムで動くのならば、いずれはそれを人工知能に搭載できるときがやってくるだろう。ヒトのように意識あるAI(人工意識)が誕生するのだ。

 そんな未来がほんとうに訪れるのだろうか? 自由な意志について考察することは、人類の行く末を見つめるうえでも重要なテーマとなるだろう。

インターシフト編集部

インターシフト
2016年10月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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