イスラムの人に「ヴェールを脱げ」というのは「ミニスカートを履け」というのと同じ

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 10月30日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』(ミシマ社)の著者、内藤正典さんが出演した。内藤さんはイスラム教徒の素顔を知ってほしいと語った。

■イスラム教徒は既に我々の隣人

『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』はイスラム教徒ではない内藤さんがイスラム教徒の人間像とイスラム社会について解説する社会論。

 前書きには「私たち日本人はイスラム教徒と関わらずに生きていくことはもはやできない」と書かれているという。内藤さんはイスラム教徒は世界で15億人以上が存在し、3人に1人がイスラム教徒だという現実を示し、彼らは既に隣人だと解説する。そこで内藤さんはこれまでの研究や自身のトルコでの生活をもとに、イスラム教徒の人となりを知ってほしいとの思いから同書を書いたと解説された。

■イスラムは気楽で優しい

 同書の中にはイスラム教の様々な特徴が描かれており、厳格なイメージのあるイスラム教だが本当は「気楽になれる教え」だと書いている。戒律やルールが細かいため、人間が頭で判断しなくてよく、結果も含め神様に「丸投げ」できる。成功も失敗も個人の努力ではなく「神様が決めたことだ」と考えられるため気楽に生きられるというわけだ。

 内藤さんはヨーロッパにも滞在していたころ、現地の人々の冷たさに緊張を感じたという。中世から続く「人が人に対して狼」であるという喩えを肌身をもって感じていたと語る。逆にイスラム圏では、彼らにとって旅人や弱者に対する優しさは神様が命じた義務であるため、何度も親切を受けたという。「どこから来たのか、どこの国の人なのか、肌の色などを線引きせずに付き合ってくれるのがイスラム教徒の特徴」だと日本の人々にその素顔を知ってほしいと語った。

■人を知ることでわかりあえる

 内藤さんは今後イスラム社会とわかりあい暴力の応酬を止めるためには、国家よりも「人を知る」ことが大事だと述べる。国をこえて、イスラム教徒を人間として見た時に何を大切にしているのか、何をされたら怒るのかを理解することが大事だという。

 例えば女性が着用するヴェールに関しても「遅れている。男性の暴力で被らされている」と決め付けるのではなく、女性自身に聞いてみると「肌を出すのが恥ずかしい、羞恥心があるから被っている」と話すという。短いスカートを履けと言えばセクハラになるように、肌をどこまで露出するかは他人や国家権力が言うことではなく、本人が決めるべきことだと内藤さんは主張し、人そのものを知ることが重要だと語った。

NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。コーナーはNHKのウェブサイト(http://www4.nhk.or.jp/r-asa/340/)でも聞くことができる。

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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