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- 本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践
- 価格:1,100円(税込)
最近は、スマートフォンとテレビくらいしか音を聴く装置を所有していない人が珍しくありません。でも、せっかく買ったCDやダウンロードした音楽はできるだけ「いい音」で聞きたいもの。サイエンス・アイ新書『本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践』の著者であり、株式会社ナムコで13年間サウンドデザイナーとして活躍し、現在はフリーランスの作・編曲家である中村和宏さんに、「スピーカー購入時のコツ」を伺いました。自分の好みの周波数特性を見つける方法もわかりますので、ぜひチェックしてみてください。
■「良いスピーカー」って何だろう?
まず理解してほしいのが、そもそも「この世に、完全無欠の完璧な再生能力を持つスピーカーは存在しない」ということです。それに近いスピーカーもありますが、設置場所や部屋の音響次第で音はいくらでも変わってしまいます。機器を買って、適当にその辺にポンと置けば「その機器本来の鳴り=再生能力」を発揮してくれるわけではありません。ここがオーディオ再生の難しいところでもあり、楽しいところでもありますが…。
また、理想に近いスピーカーは、そもそもべらぼうに高くて、設置に必要な面積もとても広く、よっぽどオーディオを好きな方以外にはお勧めしにくいものです。私がお勧めしたいのは、もっと手軽な製品の中から「自分の好みに合ったスピーカーを選ぶ」という手です。
音には「大きさ」に加え、「高い」「低い」があります。誰でも「あの人の声は、この人の声より低い」などと認識できます。この音の高低は数値化できます。いわゆる音の周波数です。周波数は音以外でも使われますが、ここでは「周波数=音の周波数」として解説していきます。数値が小さければ音は低くなり、大きければ高くなります。CDの再生可能な周波数(周波数帯域)は、20Hz~22.05kHzです。最近話題のハイレゾ音源だと20Hz~48kHzまでとなり、CDの倍以上高い音、つまり高周波を再生できます。
スピーカーは通常、高周波だけでなく低周波(低い音)から高周波(高い音)まで、まんべんなく再生します。「どのくらいまんべんなく再生できているか」を示すのが「周波数特性グラフ」です(写真1)。縦軸は音の大小、横軸は周波数の大小です。縦軸を上に行くほど周波数の音は大きく、下に行くほど小さくなります。また、横軸を左に行くほど低い音、右に行くほど高い音になります。
「周波数特性グラフはフラットが良い」と一般的に言われるのは、再生するテスト音源の周波数特性がフラットだからです。正確には「再生音源を忠実に再生できるのが良い」のです。それが理想です。しかし残念ながら、ほとんどのスピーカーはそこまでの正確な再生能力を持ち合わせていません。特にエレクトリックベースのいちばん低い音や、バスドラムの音を正確に再生できる低周波再生に優れたスピーカーは、物理的な問題でほとんど存在しないと言っていいでしょう。ですから気に入ったスピーカーをお手ごろ価格で見つけるなら、正確な再生能力にあまり固執しないほうが良いのです。
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