「ドンシャリ」それとも「ボーカル主体」? 自分好みの周波数特性を見つけて、心地よい音楽を聴こう!

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■三択で自分好みの「周波数特性」を選ぶ

 では、好みのスピーカーを見つけるコツは何でしょうか。私のお勧めは「自分の好みを知る」ということです。マーケットではあまりにも「原音忠実再生」が叫ばれ、なんだか「それがすべて」のようになっていますが、私が、多くの方と音についての話をしてきた経験では、一般的な方は大きく分けて「3種類の周波数特性のうちのどれかを好む」ことが多いようです。ということであれば、どの周波数特性が自分の好みなのか知っていれば、好みと違うスピーカーを選んでしまうリスクが減り、製品を選ぶときも絞り込めます。また、店員さんに自分の好みを伝えやすくなります。

 では、実際に見ていきましょう。再生音源の周波数特性はフラットです。

 1つめは「右肩下がり型」(写真2)です。床面に設置するスピーカー(トールボーイ型)など、大型スピーカーに多く見られる周波数特性です。日本人でインストルメント曲が好きな方に多いようです。低周波が高周波よりやや強く、低周波から高周波にかけて「なだらかに」下がっていく周波数特性です。つまり「低音がしっかり出て、あまり高音がシャリシャリしない」音になります。多くの人が「心地良い」と感じやすい周波数特性です。

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写真2●「右肩下がり型」。多くの人が「心地良い」と感じやすい

 2つめは、いわゆる「ドンシャリ型」(写真3)です。小型スピーカーから大型スピーカーまで、幅広い製品がこのタイプです。真ん中の周波数より低周波と高周波が強いグラフ形状になります。アメリカ人にこの型を好む方が多いようですが、手ごろな価格の製品は、大なり小なりこの型であることが多いです。低音と高音がともに強いので、真ん中の帯域を占めるボーカルは引っ込み気味ですが、ドラムやベースの音が強くなり高音も強めなので、右肩下がりよりも「バックの楽器の演奏がしっかり聞こえる」ようになります。ジャズや、タイトでハイファイ(高再現性)なロックを好む方に向いていることが多いです。


写真3●「ドンシャリ型」。ロックを好む人に向く

 3つめは「かまぼこ型」です(写真4)。低周波と高周波が真ん中の周波数より弱いグラフです。要は「ドンシャリの逆」です。この周波数特性はあまりお国柄には関係なく、ポピュラー音楽のなかでも「ボーカル主体でオケの演奏があまり強くない曲」、いわゆる「歌モノ」を好む方はかまぼこ型を好むことが多いです。低音と高音が丸められる(≒弱い)のでソフトに聞こえることが多く、ボーカルが他の2つの周波数特性より断然前に出てきます。よって「オケよりボーカル主体で聴きたい」方が好むのです。「オケがボーカルを邪魔しない」という言い方をする人もいます。


写真4●「かまぼこ型」。ボーカル主体で聞きたい人向け

 「ボーカルはしっかり」「オケは控えめ」が好みなら、かまぼこ型の周波数特性が好みと思われますから「ボーカルの再生に優れた」スピーカーを中心に探します。「ボーカルも大事だけどオケの演奏がしっかり聞こえるほうが好み」ならドンシャリ型の周波数特性が好みと思われます。「オケの演奏はしっかり聴きたいけど、シャリシャリするのはイヤ」「全体のバランスが良いほうがいい」なら右肩下がり型が好みでしょう。こうして自分の好みを見つければしめたものです。試聴のとき、そのスピーカーが自分の好みかどうかをすぐ判断できるからです。

 とはいえ、これはあくまでガイドラインです。自宅にスピーカーがあるならお気に入りの曲を聴いて、同じ曲をお店に持参して聴き比べてください。このとき、上の3つの周波数特性のうち、「自宅のスピーカーはどれだろう」「お店のこのスピーカーはどれだろう」と考えながら聴いてください。

 なお、1件目のお店でいきなり1台目のスピーカーを買うことはお勧めしません。何台ものスピーカーで同じ曲を再生して比較し、相対的に低音が強いか弱いか、高音が強いか弱いかを、まず実感してください。そこからゆっくりと候補のスピーカーを絞り込めば良いのです。焦りは禁物です。スピーカーは「ゆっくり、じっくり」選んでください。

SBクリエイティブ
2016年11月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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