【手帖】星加ルミ子さん20年ぶり著作

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星加ルミ子さん

 ビートルズの来日公演(昭和41年6月30日~7月2日)から半世紀の今年は、春から初夏にかけて関連書籍が複数出版された。

 星加ルミ子さん(76)のエッセー「私が会ったビートルズとロック★スター」(シンコーミュージック・エンタテインメント・1400円+税)は、なぜか“記念月”も過ぎた10月末になって出た。

 「もちろん春に出せるつもりで、書きたいと申し出たのですが」。昨年10月から原稿用紙に向かったが、筆は進まなかった。ホホホと笑う。シンコー(当時は新興音楽出版)の音楽雑誌「ミュージック・ライフ」(平成10年休刊)の編集長だった星加さんは、現役時代のビートルズの取材に成功した、ただ一人の日本人記者だ。

 ビートルズは昭和45年に解散する。星加さんは50年に雑誌を去り、ほどなく音楽の世界そのものから遠ざかる。

 「結婚し、38歳で息子を出産。母親として、遅ればせながら世間というものを知るなど子育てが楽しくて」

 それに、ビートルズ以後の音楽はピンとこなかった。平成8年、自身のビートルズ取材の総決算ともいえる単行本「BEATLES 太陽を追いかけて」を著すが、再び沈黙。20年を経て今作だ。

 少し悩んで、今回はビートルズを支えたマネジャーら周辺人物に光を当てることにした。24歳だった星加さんが、取材不可能といわれたスーパースターに会うため、まず接触した人々であり、その後も毎年「取材においで」と声をかけ続けてくれた恩人たち。星加さんならではの視点だろう。

 「インターネットのおかげで知識は豊富。でも、体験するのは『怖い』と言う若い人たちに、当時の私のように現場に飛び込んでごらんなさいと伝えたい」とも。

 星加さん、今回は沈黙していない。精力的にトークショーを開いて、ビートルズや自分について語っているのだ。名刺の肩書は「音楽評論家」だが、「ビートルズの語り部」としてはどうか。その資格を持つ、たった一人の日本人なのだから。(石井健)

産経新聞
2016年12月11月 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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