2016年を書評で振り返る ゲス不倫、「日本死ね!」、パナマ文書、オバマ広島訪問、熊本地震から舛添辞任まで[前編]

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 2016年も残りわずかとなりました。今年も様々な出来事が起こり、様々な本が出版されました。サイト開設から1周年を迎えた書評まとめサイト「Book Bang」には時事問題に関連する書評も続々と集まっています。今年の出来事に思いを馳せながら年末年始の読書を楽しみましょう。まずは1月から6月までの出来事を振り返ります。

■1月7日 ベッキーさん不倫騒動勃発

 この日発売された週刊誌でミュージシャン川谷絵音氏との不倫疑惑を報じられたタレントのベッキーさん。一旦は不倫を否定したものの、その後2人のメッセージアプリでのやりとりが流出するなどし、大炎上となりました。また今年は他にも、宮崎謙介元衆院議員や乙武洋匡氏、石井竜也氏にファンキー加藤氏、三遊亭円楽師匠に浦沢直樹氏、テレ朝アナウンサーに日教組委員長と、次から次へと不倫報道が相次ぎました。「ゲス不倫」で人生が変わってしまった方も多く、不倫の代償について考えさせられる一年でした。不倫を経済学的な見地から試算した一冊と、結婚制度に異議を唱え、四角関係の大恋愛を制した熱い女性についての評伝、それぞれの書評がこちらです。

不倫経済学

〈『不倫経済学』レビュー〉
レビュアー:碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

(略)ベッキー、育休議員から文枝師匠まで不倫騒動が続く昨今。一瞬、不倫問題の収支決算かと思ったが違った。経済学者である著者が、“熟年性愛市場”をマジメに分析し、試算しているのだ。
http://www.bookbang.jp/review/article/509360

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村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝

〈『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』レビュー〉
「結婚や社会道徳と対決した烈女」レビュアー:大竹昭子(作家)

(略)本書が特異なのは、野枝の人生や残したことばからいまを生き抜く力を得よう!という思いが、チクショウ! ムカつく、などを連発する講談調の語りで展開されることだ。
http://www.bookbang.jp/review/article/514347

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「行動で閉塞感を突破」レビュアー:川上隆志(専修大教授)
安全保障という名の戦争法案、経済停滞と格差拡大、世界的なテロの恐怖、一方政治家や芸能人の不倫には大騒ぎ。この閉塞(へいそく)した世をどう生きればいいのか。
大正時代、そんな閉塞感を打ち破り大胆に鮮烈に生きた女性がいる。伊藤野枝は生き方に決まりはないと、世の慣習や良識にとらわれない自由な生を貫いた。
http://www.bookbang.jp/review/article/512876

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「ルールより人間信じて」レビュアー:朝井リョウ(作家)
子どもを育てることと、働き続けること。家庭を持つことと、その外で恋愛をすること。制度的にも、倫理的にも、両立し難いと思われていることは多い。それは無理ってことにしておこう、という目に見えない言外の約束は、私たちの足首を掴(つか)み、その身動きを制限する。
http://www.bookbang.jp/review/article/512020

■1月29日 日銀、マイナス金利導入を決定

 日銀はさらなる金融緩和策として、お金を預けると利息がもらえるのではなく、日銀が手数料を徴収するというマイナス金利政策の導入を決めました。消費や投資にお金が回り景気を刺激することが狙いでした。事実不動産市場にはお金が流れ、融資額は過去最高を記録しました。しかし株安や円高が続きマイナス金利政策は失敗だったとの声もあがっていました。予測のつかないことは起こるもので、その後突如訪れた「トランプ相場」により株高円安の局面が訪れ、失敗だったとの声も急速に聞こえてこなくなりました。今後「円」は「経済」はどのような動きを見せるのか? マイナス金利導入を予見していた一冊と、マイナス金利自体について解説した一冊です。

通貨の未来 円・ドル・元

〈『通貨の未来 円・ドル・元』レビュー〉
「世界経済を複眼的に」レビュアー:柳川範之(経済学者・東京大学教授)

揺れ動く世界の情勢は、例えば輸入品の価格が変化する等、実は様々な面を通じて、日常生活に影響を与えている。世界を相手にビジネスをしていなくても、世界経済の動向をできるだけ把握しておくことは、今後ますます重要になるだろう。
http://www.bookbang.jp/review/article/513534

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マイナス金利

〈『[緊急解説]マイナス金利』レビュー〉
レビュアー:週刊新潮

黒田日銀による「マイナス金利政策」の内幕を、日経新聞編集委員が徹底取材。
http://www.bookbang.jp/review/article/511453

■2月2日 清原和博氏、覚せい剤所持容疑で逮捕

 元プロ野球選手の清原和博氏が覚醒剤取締法違反で逮捕されました。その後6月に懲役2年6月(執行猶予4年)の有罪判決が確定しました。清原氏は10月には薬物治療も開始し、更生の日々を送っていると報じられています。薬物や賭博などの不祥事ならずともメディアを騒がせる野球人は多く、ヒーローから一転悪役となることも数知れず。そんなメディアを騒がせた75人の野球人たちを徹底的に分析した一冊がこちら。

プロ野球「黒歴史」読本 メディアを騒がせた75人の男たち

〈『プロ野球「黒歴史」読本 メディアを騒がせた75人の男たち』レビュー〉
レビュアー:週刊新潮

シーズン真っ盛りのプロ野球だが、今年は清原事件がどこか尾を引いている。本書に登場するのは、その清原をはじめとする75人だ。
http://www.bookbang.jp/review/article/515384

■2月15日 「保育園落ちた日本死ね!!!」匿名ブログへの投稿が話題

「保活」に落ちた母親の匿名ブログへの過激な投稿がきっかけで、母親たちの切実な叫びに日本中が耳を傾ける事態となりました。国会でも取り上げられ論争となりました。12月には「新語・流行語大賞」のトップ10に入ると、主にその言葉遣いに対して議論が再燃しました。来年度からの保育士の昇給が報じられはしましたが、肝心の保活をめぐる状況は変わったのでしょうか? 作家の辻村深月さんが女性誌『VERY』で連載していた保活にまつわる小説と、少子化を克服したフランスではどのような政策が採られているのかをレポートした一冊を紹介します。

クローバーナイト

〈『クローバーナイト』レビュー〉
「辻村深月の世界「イケダン・ホカツ・お受験……普通ってなんだ?」」レビュアー:品川裕香

(略)まず、『VERY』連載ということもあり「イケダン」「イクメン」「ホカツ」「お受験」など今どきの都会の家族や育児を理解するうえで重要となるキーワードを中心に物語が紡がれている点だ
本作品を読まなければ「イケダン」なんて言葉は知らなかったという人もいるだろう。
http://www.bookbang.jp/review/article/521840

フランスはどう少子化を克服したか

〈『フランスはどう少子化を克服したか』レビュー〉
「子供の増える国、フランスの発想法」髙崎順子

ピカピカの遊具、園内で手作りするごはん。保育士は園児をこまめに着替えさせて清潔に保ち、月に一度は季節の行事や遠足を催す。日本の保育園を数件見学した際、その設備と充実した保育内容に感銘を受けた。
 一方、私が2人の子供を預けているパリ郊外の保育園では、給食はセンターでつくったものがほとんど。
http://www.bookbang.jp/review/article/519973

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「【聞きたい。】高崎順子さん 女性に二者択一を迫らない」インタビュアー:村島有紀
「保育士は決して親の代わりはしない。子供をしつけたり、愛情を注いだりするのは親の役目で、保育所は中継地点でしかない。子育ての喜びを親から奪わないのがフランス式です」
http://www.bookbang.jp/review/article/521771

■3月30日 台湾の鴻海が経営再建中のシャープの買収を決定

 この日台湾の鴻海精密工業が取締役会を開き、経営再建中のシャープ買収を決議しました。2015年12月より続いてきた交渉がようやくまとまりました。かつては日本を代表する家電メーカーであっただけに、その衝撃は大きく、なぜシャープが没落してしまったのか、その元凶を探るビジネス書が数多く出版されました。そのなかから、かつてAppleのスティーブ・ジョブズが憧れたという伝説のシャープエンジニアに迫った一冊を紹介します。

ロケット・ササキ

〈『ロケット・ササキ』レビュー〉
「シャープの盛衰を決めた「伝説の技術者」」レビュアー:成毛眞(書評サイト〈HONZ〉代表)

ビル・ゲイツの功績を一つだけ挙げよと聞かれたら、かならずこう答えている。それはOSを標準化したことではなく、集積回路すなわちLSIの価格を劇的に下げたことだと。
http://www.bookbang.jp/review/article/513129

■4月3日 租税回避行為を暴露した「パナマ文書」が公開される

 各国の元首や実業家・企業などが、低い税率を有する国や地域を租税回避地として利用していることが暴露されました。自国で税金を納めず私腹を肥やす行為に反発は広がり、辞任に追い込まれる元首もあらわれました。スポーツ選手や俳優らの名前もあがり、世界的な騒動に発展。その後に待ちうける「イギリスのEU離脱問題」「トランプ旋風」など貧富の格差やグローバリズムへの反感を熾火のように下支えした騒動ともいえます。リークを受けた新聞記者本人の著書を手嶋龍一氏が評しています。

パナマ文書

〈『パナマ文書』レビュー〉
「迷路の果てに広がる壮大にして醜悪な光景」レビュアー:手嶋龍一(外交ジャーナリスト、作家)

“ハロー、私はジョン・ドゥ。
データに興味はあるか?
共有してもいい。”
硬派の調査報道で高い評価を得てきた南ドイツ新聞のバスティアン・オーバーマイヤー記者に短いメールが舞い込んだ。「興味あり」と打ち返すと、情報源を秘匿する取り決めを交わしたいと返信があった。
http://www.bookbang.jp/review/article/517692

■4月12日 2016年本屋大賞『羊と鋼の森』に決定

 全国の書店員さんが選んだ一番売りたい本を決定する本屋大賞の発表が行われ、宮下奈都さんの『羊と鋼の森』(文藝春秋) が大賞を受賞しました。同書はピアノの調律師が主人公。高校の時に見た調律の様子に憧れ、自身も調律師となります。よい音をつくりだすために悩み、真摯に仕事と向き合う姿勢には誰もが共感することでしょう。地道な人生に光が差すような瞬間を静かで美しい文章で綴り、多くの書店員さんから支持を得ました。
Book Bangにも数多くの書評が届いています。

羊と鋼の森

〈『羊と鋼の森』レビュー〉

「佐藤優は『羊と鋼の森』を読んで才能と努力の関係を再確認した」レビュアー:佐藤優(作家・元外務省主任分析官)
本書は、2016年の本屋大賞に選ばれた。まさにその価値がある優れた作品だ。主人公の外村は、調律師だ。なぜ、この職業を選んだかというと、高校生のとき、偶然、古いピアノの調律の場に立ち会ったからだ。
http://www.bookbang.jp/review/article/520712

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「たくさんの、大切にしたい言葉と出会えました」レビュアー:ブックセンターほんだ(書店員)
実家に置いたままにしてあるピアノに思いを馳せながら読みました。
何年も弾かれていないピアノは、今、どんな音を鳴らすのか。もし、調律してもらったら、どんな音を鳴らすようになるのか。
http://www.bookbang.jp/review/article/512619
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「キノベス!2016 第1位『羊と鋼の森』」レビュアー:奥野智詞(紀伊國屋書店・グランフロント大阪店)
調律師の青年と、羊と、ふたごと、森の物語。音と自然、言葉には表せない美しさが本の中に広がっている。そして美しいものを信じて歩む人たちの力強さに心奮わされる。
http://www.bookbang.jp/review/article/510536

■4月14日 熊本で震度7の地震、死者171人に

 熊本県熊本地方を震源とする大地震が発生。震度7が2度観測され、土砂崩れや橋梁の脱落など各地で大きな被害が出ました。震災関連死は12月27日現在171人に上りました。一方東日本大震災から5年が経ち、当時の教訓を今回の地震に繋げ、インフラ・物流の再建や支援活動の体制づくりが迅速に行われたとの報告もあがっています。3.11で日本は何が変わったのかを振りかえった一冊、江戸時代はどのように天災から復興していたのかを学ぶ一冊、そして地震発生直前の貴重な熊本城の様子を仔細に記録した「ブラタモリ」の番組本を紹介します。

3.11 震災は日本を変えたのか

〈『3.11 震災は日本を変えたのか』レビュー〉
「内と外から動向分析」レビュアー:牧原出(政治学者・東京大教授)

東日本大震災から5年が経(た)ち、少しずつではあれ復興も進んできたかと思いきや、熊本地震が勃発した。どうやら日本は長い震災の時代に入ったのかもしれない。そうだとすると、あの3・11は何だったのか、もう一度問い直したくなる。とはいうものの、無関係の第三者として、冷徹に震災を分析できる日本人はそうはいない。被害が広域かつ甚大であればあるほど、震災そのものに関わるか、関わりの深い人と触れあう機会が多くなる。黙って感慨を心中にしまい込むのが、たしなみというものであろう。
http://www.bookbang.jp/review/article/512781

江戸の災害史 徳川日本の経験に学ぶ

〈『江戸の災害史 徳川日本の経験に学ぶ』レビュー〉
「藩・民挙げた救済の形」レビュアー:寒川旭(地震考古学者)

四月に熊本地震が発生した。最近では広島の土砂災害や御嶽山噴火、巨大な津波が押し寄せた東日本大震災など、災害の絶えない日本列島。本書は江戸時代の人々がそれらにどう対処してきたかを詳しく記述する。
http://www.bookbang.jp/review/article/514939

ブラタモリ

〈『ブラタモリ』レビュー〉
「掲載都市の書店が店頭展開」レビュアー:産経新聞社

タレントのタモリさんがぶらりと街を歩き、独自の視点でその成り立ちを解く、NHKの人気番組の書籍化。平成27年度の放送内容を6巻に分けて刊行中で、5、6巻は12月16日に出る予定。
写真や地図で番組を再現したうえで、取材やコラムを追加し、内容を深めている。心がけたのは、番組の世界観を崩さないこと。「番組ファンが多いスタッフたちによる、番組愛あふれる編集ができたのでは」と出版社。
http://www.bookbang.jp/review/article/521759

■5月27日 オバマ米大統領が広島を訪問

 伊勢志摩で行われた先進国首脳会議に出席後、オバマ大統領が現職のアメリカ大統領として初めて被爆地広島を訪れました。平和記念公園で原爆死没者慰霊碑に献花し、スピーチを行いました。また被爆者を抱きしめ、日本被団協代表の坪井さんとも握手を交わしました。歴史的な訪問は関係者の様々な努力の上に成し遂げられたことがわかる一冊、坪井さんらの語る戦争証言集、感動的なスピーチを訳す同時通訳者に迫った一冊。どれも必読の書です。

オバマ大統領がヒロシマを訪れた日

〈『オバマ大統領がヒロシマを訪れた日』レビュー〉
レビュアー:週刊新潮

一昨年と昨年、広島テレビは、市民が書いた「オバマへの手紙」約1500通をホワイトハウスへ届けた。
http://www.bookbang.jp/review/article/517729

語り遺す戦場のリアル

〈『語り遺す戦場のリアル』レビュー〉
「67人・戦争の証言」レビュアー:ブックセンターササエ(佐々栄文盛堂)(書店員)

今後もずっと「戦後」でいられるように。書店員たる自分ができるささやかな事として、例年、7、8月は「戦争を考える」フェアを展開している。(あまり動きは芳しくないが…。)本書は書名の通り、67人の体験者の戦争証言集。
http://www.bookbang.jp/review/article/516549

同時通訳はやめられない

〈『同時通訳はやめられない』レビュー〉
「『聞いてないよ!』の連続 同時通訳というお仕事」レビュアー:渡邊十絲子(詩人)

今年5月、現職のアメリカ大統領が初めて広島を訪れ、原爆慰霊碑に献花した。この日のスピーチを同時通訳したのが著者だ(BBCワールドニュース)。謝罪なしのあっさりしたスピーチになるという事前情報があったが、オバマの言葉はこうだった。「71年前、雲一つない晴れ渡った朝に、死が空から降ってきて、世界が一変しました」。予想に反し、詩的で格調高いスピーチが始まったのだ。練りに練った文学的表現を同時通訳するほど難しいことはない。
http://www.bookbang.jp/review/article/518678

■6月15日 舛添要一氏、都知事辞任を表明

 政治資金の使途をめぐる問題で追及を受けていた第19代東京都知事の舛添要一氏が辞任を表明しました。パフォーマンスともとれる無駄に豪華な海外出張や、政治資金の使途が公私混同であるとの報道を受け批判が高まっていました。そんな舛添氏を自分をよく見せるために「平気で盛る人」だと分析するのは精神科医の和田秀樹さん。和田さんは3月に経歴詐称が発覚したショーンK氏や一昨年話題となった野々村元県議、小保方晴子氏、佐村河内守氏らにもみられたパーソナリティ障害についても分析し、自分を偉く見せようとする彼らに共通する病理について解説しています。

自分を「平気で盛る」人の正体

〈『自分を「平気で盛る」人の正体』レビュー〉
「舛添氏、ショーンK氏、野々村元県議…。なぜ「自分を盛る人」が増えているのか?」和田秀樹

いま、テレビやSNS、職場などで、平気でウソをついたり、演技や経歴詐称まで行ったりして、自分を過度に良く見せたがる人、つまり「平気で盛る人」が増えています。
http://www.bookbang.jp/review/article/519894

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 以上2016年1月から6月までを振り返りました。後編「ポケモンGO、小池旋風、「君の名は。」からトランプショックまで!」では7月から12月を振り返ります。
(書評は一部抜粋して掲載しています)

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年12月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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