第156回芥川賞受賞作『しんせかい』は「富良野塾」の内幕を描いた「私小説」なのか?

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 1月21日放送のTBS「王様のブランチ」のブックコーナーに第156回芥川賞を受賞した山下澄人さん(50)が出演した。私小説なのではないかと話題を集めた受賞作について、本人が語った。

■私小説なのか?

 山下さんは倉本聰さん(82)が設立した富良野塾の第二期生。受賞作『しんせかい』(新潮社)は主人公「山下スミト」が北の谷にある演劇塾で共同生活を営みながら役者の稽古に励む姿が描かれる。また塾を主宰する【先生】との軋轢も描かれている。著者自身の体験を描いた私小説を思わせる設定だが、そのような見方をされることについて番組に出演した山下さんはこう解説した。

「実際にあったこととかって、いくらでもこれホントにあったよって言えるんですけど、でもそこにおった人に聞いてみると、全然違ってたりして。いや、あのとき私は笑ってないとか、私はむしろ泣いてたとかって言われて、えーっとかって結構普通にあるじゃないですか、誰でも。だからそれを修正しないでそのまま書こうって。だからこれは『嘘』ですって最初から言っておこうと。僕は富良野塾にはいませんでしたくらいの(笑)」

 事実であるとは言いきらずも、自らの原点と向き合った小説であるのは確かなようだった。

 文芸評論家の伊藤氏貴さんは同作について東京新聞の書評で「事実かどうかよりも、そこに時間がかける靄(もや)をこそ楽しむという点で、私小説とは似て非なる新しい小説だ。」( https://www.bookbang.jp/review/article/523363 )と評している。

王様のブランチ」はTBSにて毎週土曜日9:30から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2017年1月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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