第156回直木賞受賞作『蜜蜂と遠雷』は500ページ2段組みだが2時間で一気に読める快作!

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 1月21日放送のTBS「王様のブランチ」のブックコーナーに第156回直木賞を受賞した恩田陸さん(52)が出演した。音楽を言葉で表現した受賞作について自らの言葉で思いが語られた。

■直木賞受賞作『蜜蜂と遠雷』

 恩田さんは1992年にデビュー。これまでに『夜のピクニック』(新潮社)で第2回本屋大賞、『中庭の出来事』(新潮社)で第20回山本周五郎賞を受賞し、直木賞にも今回で6回目のノミネート。今作『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)で待望の受賞となった。

 受賞作『蜜蜂と遠雷』は世界的な注目を集めるピアノコンクールが舞台。世界各国の予選を勝ち抜いた個性豊かな天才たちが集まり繰り広げられる群像劇。魅力的なキャラクターとドラマチックな展開で読者の心を最後まで掴んで離さない。500ページを超える物語を一気読みしたとのレビューが溢れていることでも特徴的だ。

 選考委員の浅田次郎さんは「音楽や才能は、大変小説にしづらいものです。それを独自の言葉を使い、多様な表現により音楽に迫った。そのことに評価が集まりました。」(産経新聞より)と講評した。

■音楽を言葉で表現した

 番組に登場した恩田さんは、音楽を言葉で表現するという困難なテーマに挑んだことについて語った。

「文章だと読者の頭の中に音を鳴らせるので、皆違った音を想像できると思う。そういうことは逆に小説じゃないとできないと思うので、意外と小説と音楽は相性がいいなと思いました」

 しかし恩田さんは物語が進むにつれ、同じ曲が何度も続く演奏シーンの表現について苦労したという。

「同じ曲を弾くにしても同じ演奏者でも違うというように感じるようにというのをすごく心がけましたし、とにかく迷ったら実際の曲を何度も聞いて、それで書くようにしていたので」と執筆の様子を明かした。

 恩田さんは同作の中で同じ曲を演奏者によって「雨のしずくがおのれの重みに耐えかねて一粒一粒垂れているような」や「一音一音が深く、豊かでむき出しではなくビロードで包んだかのよう」などと豊かな表現でその個性の差異をあらわしている。

 そのような演奏者たちの個性について「才能と言っても色んな種類の才能があるし、人間同士じゃないとインスパイアされないものってあるなと思いながら聞いていたので、そういうところを書いてみたいなと思いました」と魅力的なキャラクター造形の手がかりを明かした。

 番組解説者で早稲田大学文学学術院准教授の市川真人さんは「大体直木賞、芥川賞は6回ぐらいしか候補にならないので、本当に最後のチャンスでした。でも1回目から絶対取るだろうと言われてた人なので、本当にいい作品で受賞したと思いますね。」と恩田さんの受賞を喜んだ。また2段組みで500ページもあるのに「一気に2時間くらいで読める。とにかく漫画を読むようにも読めるし、ゆっくり丁寧に読んでもいい。色んな読み方ができるのが恩田さんという作家の特徴」と評した。

王様のブランチ」はTBSにて毎週土曜日9:30から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2017年1月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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