「なろう系」小説は誰が買っているのか? 主人公も「アラフォー」に

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 8月29日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、単行本 文芸書第1位は『アラフォー賢者の異世界生活日記(4)』が獲得した。
 第2位は第157回直木賞を受賞した『月の満ち欠け』。第3位は『フェアリーテイル・クロニクル 空気読まない異世界ライフ(15)』となった。

 今週は1位、3位、6位、9位に小説投稿サイト発の作品が並んだ。いずれの小説も主人公は現代の日本からファンタジーゲーム風世界へ転生し、そこで活躍するという物語だ。主人公たちは現代の進んだ知識を携えたまま転生し、その世界においては「チート(ずる)」な強さを遺憾なく発揮する。また転生先で戦闘能力や魔法を操る力、特権階級としての権力などを、本人の努力なしで獲得しているパターンが多く、現代では平凡な主人公が異世界ではもてはやされることになる。これら「異世界転生モノ」は多くの作品が投稿されているサイト「小説家になろう」にちなみ「なろう系」と呼ばれることもある。

 異世界転生モノは投稿サイトの定番人気コンテンツとなっており、ランキング上位を占めていることもある。そのため出版社の目に留まり書籍化される作品も多い。書籍化に際し投稿サイトからは削除される作品もあるが、そのまま掲載が続けられる作品もある。無料で読める投稿サイトに掲載されているのになぜ書籍を購入するのか、という疑問にライトノベルに詳しい編集者はこう語る。

「ウェブサイトでの『なろう系』読者は10代や20代の若者が中心ですが、書籍化された作品を買っているのは30代、40代が中心です。時間のある若者は荒削りながらも面白い作品を自分で探して読みますが、お金のある中高年はちゃんと編集者の目が入り、しっかりと推敲・校正された作品を書店で購入して読んでいます」

 1980年代のライトノベル創世記からファンタジー小説を読んでいる大人の読者が「なろう系」を購入しているというのだ。そのため読者の願望を反映したかのような作品が多いこのジャンルで、30代40代の主人公が転生するというパターンも増えてきている、と前出の編集者は解説する。今週文芸書ランキングで1位となった「アラフォー賢者の異世界生活日記」シリーズも40代無職のさえないおじさんが主人公だ。

 このような風潮を「安易だ」「世も末だ」と嘆くのは簡単だ。しかし前出の編集者は自身を振り返り、こうも言う。

「『なろう系』の作者のなかには既存の出版社主催の小説コンテストの落選者も大勢います。我々がコンテストでは切って捨てた彼らの作品が大くの読者に楽しまれているのは事実です。書籍化し大きな売上をあげているのをみると、読者が求めるものを提供するのも我々の役目だったと改めて考えさせられます」

 これらの作品をウェブ上で書き殴った小説だと卑下せずに、しっかりと編集者の手が入った書籍版を購入し、楽しんでみてはいかがだろう。芥川・直木賞を獲った作品よりも売れているからにはそれなりの魅力があるはずだ。

1位『アラフォー賢者の異世界生活日記(4)』寿 安清[著](KADOKAWA)

リストラに遭って以来、毎日畑の世話をしながら『ゼロス・マーリン』としてゲームにのめり込む日々を送っていた、無職のおっさん大迫 聡(40歳)。オリジナルの魔法を作り、名実ともにトッププレイヤーに上り詰めた彼は、ラスボスを難なく攻略するが、ログイン中に発生したある事故によりその生涯に幕をおろす。独りぼっちで死んだと思われた彼だったが、気づくと大深緑地帯の真っただ中に立たされていた。異世界の女神によれば、彼はゲームのステータスを引継いで転生したということらしい。(KADOKAWAウェブサイト1巻紹介より抜粋)今作4巻では主人公ゼロスが弟子のピンチを救うため、漆黒のバイクを作り出す。

2位『月の満ち欠け』佐藤正午[著](岩波書店)

あたしは,月のように死んで,生まれ変わる――目の前にいる,この七歳の娘が,いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の,三十余年におよぶ人生,その過ぎし日々が交錯し,幾重にも織り込まれてゆく.この数奇なる愛の軌跡よ! 新たな代表作の誕生は,円熟の境に達した畢竟の書き下ろし.さまよえる魂の物語は戦慄と落涙,衝撃のラストへ.(岩波書店ウェブサイトより)

3位『フェアリーテイル・クロニクル 空気読まない異世界ライフ(15)』埴輪星人[著](KADOKAWA)

不慮の事故で飛ばされた異世界。そこには人気VRMMO『フェアリーテイル・クロニクル』と酷似した世界が広がっていた。(KADOKAWAウェブサイト1巻紹介より抜粋)異世界を舞台に自給自足で生産を繰り返すモノづくり系異世界ファンタジー。今作15巻では邪神教団との争いが描かれる「邪神編」が始まった。

4位『影裏』沼田真佑[著](文藝春秋)

5位『AX アックス』伊坂幸太郎[著](KADOKAWA)

6位『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中(7)』秤 猿鬼[著](オーバーラップ)

7位『忍物語』西尾維新[著](講談社)

8位『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和[著](サンマーク出版)

9位『異世界ゆるり紀行(2)子育てしながら冒険者します』水無月静琉[著](アルファポリス発行/星雲社発売)

10位『か「」く「」し「」ご「」と「』住野よる[著](新潮社)

〈単行本 文芸書ランキング 8月29日トーハン調べ〉

BookBang編集部

Book Bang編集部
2017年9月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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