温泉の平和と戦争
東西温泉文化の深層
内容紹介
湯浴みは心身の疲れを癒す!
温泉は「アジール」だ。
すなわち「避難所、憩いの場、聖域」なのだ。
古代ギリシアでは、各ポリスの神殿が典型的アジールと認められていた
ことから、その言葉の持つ意味が想像できる。アジールという概念は
「平和の場」とされた浴場、湯屋、さらには温泉と深くかかわっている。
古代ローマ共和政時代から帝国時代にかけて
公共の浴場が市民の娯楽・保養の場として生活に欠かせなくなっていた。
遠征先で温泉を見つければ、先住民がすでに利用していた温泉地を
征服した後、駐屯兵らの慰安と健康のために立派な浴場を設けた。
ローマの入浴慣習はイスラム社会に引き継がれ、
今も日常生活に定着している浴場文化の基である。
キリスト教徒も十字軍遠征を通じ、浴場の価値を再認識し、
ヨーロッパ社会に環流させた。
共同浴場には、民間浴場主が経営していた街の風呂屋のほかに、
農民・村人が共同で費用と労力をかけてこしらえた浴場があった。
風呂の用意が整うと呼び声が周囲に響き渡った。
体をきれいにするだけでなく、魂を清める働きを持つと考えられたのだった。
データ取得日:2024/04/15
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます