高橋みどり×平松洋子・対談 料理の本を読むということ、作るということ

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沢村貞子の献立日記

『沢村貞子の献立日記』

著者
山田 太一 [著]/森 まゆみ [著]/笹本 恒子 [著]/高橋 みどり [著]/黒柳 徹子 [著]/北村 暁子 [著]
出版社
新潮社
ISBN
9784106022364
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

私の好きな料理の本

『私の好きな料理の本』

著者
高橋 みどり [著]
出版社
新潮社
ISBN
9784103330417
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【特別対談】高橋みどり×平松洋子/料理の本を読むということ、作るということ

[レビュアー] 高橋みどり

高橋 でも、それだけしかないような安易な料理本もたくさん出ましたよね。自分はそうありたくないと思いつつも、本当に自分が作ったこの本で料理をしてくれるんだろうかという疑問が心の隅に湧いてくることもあって、それで、明治から1980年くらいまでの古い料理本をよく見るようになったんです。それまではこんな白黒写真で料理の何が伝わるの? って思っていたんだけれど、読んでみると、いやいやこれは伝わらないどころの話じゃないよと。特別凝ったことをしているわけでもないし、親切なわけでもないんだけれど、文章が魅力的だったり、説明がわかりやすかったりして、なにより作ってみたいと思わせるなにかがある。それが今度出る『私の好きな料理の本』につながるわけですけれど。

平松 一足先に読ませていただきましたが、厳しい問いかけをしているな、と思いました。好きだといっているその本が、自分の仕事の正反対で文字だけだったりするわけでしょう。それはつまり、自分の仕事って何? という問いかけですよね。この本の中で高橋さんはスタイリングという仕事の内容や範疇をずっと考えている。極端な話、自分の仕事っていらないんじゃないの、と考えを突き詰めることでもあるなと。

高橋 ははは。でも、事実スタイリストが要らない本もあるんですよね。そもそも写真の必要性がないものもあるし、また、自分がしゃしゃり出て行くまでもなく、スタイルの確立した料理家さんもいますし。そういうときは、お話をいただいても「いや、私はいらないでしょう」とちゃんと言います。

平松 高橋さんは、ご自身がスタイリストとして入ることで、どんな効果を生むと?

高橋 そうですね、1枚1枚の写真がどうというよりも、1冊のビジュアルの流れがよくなればいいな、とは思っています。自分がページ全体を見渡す目になるというか。あとは環境作りですね。つまり自分が用意した器に料理家が触発されて美味しい料理が生まれ、それに触発されたカメラマンが勢いのある写真を撮る、そういういい連鎖を現場に作れたらなと。器は単なるツールであって、たとえばカメラマンが目の前の一皿にぐっと惹かれて、用意した器も布もぜんぜん写っていないなんてこともあります。でもそれでまったくかまわない。現実に写真に写っているかいないかは、じつはスタイリストの仕事の本質的なことではないんですよね。

平松 たしかにそう。30年近くスタイリストという仕事に取り組んできたからこその実感ですね。

高橋 まあ、自分の仕事を指してそこに写っている器や布それ自体に意味はないのだとか、巷にあふれる料理本を見て、料理の本を甘く見るなよとか、ほんとはそんな説教臭いこと言わなくてもいいんだろうけれど、いままでやりっ放し、言いっぱなしだったことに、そろそろ責任をもって応えていくときが来たんじゃないかなという気もしていて。

平松 お互い残された時間を意識するようなしないような、微妙な年齢になりましたからね。これはやっておかなきゃと本能が知らせるものもあるというか。でも、私、やりたいことの本質は大学生の頃から変わってないんですよ。ひとつの食卓からあまりにもたくさんのことが見えるということへの興味は、まったく変わっていないんです。

高橋 私もやってもやってもやり尽くすことがないなというのが最近の実感。いま、以前作った本をまた同じスタッフで作りなおそうという企画がいくつかあって、それがすごく嬉しいんです。ともに成長できる仲間がいるというのは幸せなことですよね。平松さんともこれからも一緒に歩めるように、恥ずかしくない仕事をしたいと思います。

新潮社 芸術新潮
2012年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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