『孤高 国語学者大野晋の生涯』
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孤高 国語学者大野晋の生涯 [著]川村二郎
[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)
評伝の面白さは、主人公の実人生と人物像だけではない。誰が書くかも重要だ。国語学の巨人と呼ばれる大野だが、日本語のルーツをタミル語だとする新説に対して、当時の学会やマスコミから強い反発が起きた。同時に、敵をつくることも恨みを買うことも意に介さない大野に反感を覚える者も多かった。
元「週刊朝日」編集長の著者は、記者として“人間・大野晋”の造形に挑み、成功している。ここに描かれているのは、言動には常に明らかな目的があるべきだと考え、思い立ったらただちに行動し、新しいことに挑戦し続けた一人の男の姿である。第一級の研究者として、また語り継がれるべき日本人として。