ミシェル・ルグラン自伝 ビトゥイーン・イエスタデイ・アンド・トゥモロウ [著]ミシェル・ルグラン、ステファン・ルルージュ

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ミシェル・ルグラン自伝

『ミシェル・ルグラン自伝』

著者
ミシェル・ルグラン [著]/ステファン・ルルージュ [著]/高橋明子 [訳]/濱田高志 [監修]
出版社
アルテスパブリッシング
ジャンル
芸術・生活/音楽・舞踊
ISBN
9784865591224
発売日
2015/07/25
価格
3,024円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ミシェル・ルグラン自伝 ビトゥイーン・イエスタデイ・アンド・トゥモロウ [著]ミシェル・ルグラン、ステファン・ルルージュ

[レビュアー] 大竹昭子(作家)

 ミシェル・ルグランといえば「シェルブールの雨傘」のメランコリックなメインテーマが思い浮かぶ。「ロシュフォールの恋人たち」のパンチの効いたメロディーの数々も甦ってくる。だが、彼が百六十本もの映画音楽を作っていたとは知らなかった。なかにはオリジナルがルグランとは知らずに聞いていたスタンダードナンバーもあった。楽団を率いる演奏家としての顔は承知の上だが、歌も歌っているとは未聞で、音楽に関することは何でもやってみなくては気が済まない人だということが、八十余年の人生を語った本書からわかった。

 ルグランはオリヴィエ・メシアンが教鞭をとっていた頃のパリの音楽院で正統な音楽教育を受けている。無調音楽の作曲家メシアンのクラスに入っていたらまったく違う人生になっただろうが、彼の叙情的志向をよくわかっていたナディア・ブーランジェという女性教師から音楽の基礎を叩き込まれる。シゴキに近い厳格な指導が後の活動に大きな意味をもつ。絵で言うなら絵の具の性格を知り、どう混ぜ合わせて色を作るのかを習得したのだ。

 というのも、映画音楽は制限の中で創作されるから、音の色数をどれほど持っているかが大きく物をいう。また大勢の人間が関わるので人と仕事をするのが苦手な者にもむかないが、ルグランは音楽と同じくらい人好きで、楽しむことに貪欲。映画音楽は、彼の性格と音楽的資質の両方に合致していたのである。

 とりわけ読み応えがあったのは、ジャズとの出会いだ。ジャズは学校の音楽教育に相対する「もうひとつの声、もうひとつの空気」であり、ラヴェルが「母国語」ならば、彼の「最初の日常言語」となる。マイルス・デイヴィスとの録音のくだりはスリル満点で、名盤「ルグラン・ジャズ」に響きわたるマイルスの色彩豊かな音色がまざまざと甦ってきて、思わずCDの棚に手をのばしていた。

新潮社 週刊新潮
2015年11月26日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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