決定版どうしても“日本離れ”できない韓国 [著]黒田勝弘

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決定版どうしても“日本離れ”できない韓国 [著]黒田勝弘

[レビュアー] 伊藤洋一(エコノミスト)

 日本人の記者の中で、恐らく最も長く韓国を見ている。彼の国では「右翼の黒田」と呼ばれるらしい。レッテル張りに意味は無い。重要なのは、この本が日本人の「韓国理解」に非常に役立つということだ。体験と思索と、それに「切なさ」に溢れている。

 韓国の新聞を読んでいつも疑問に思っていた。「なぜこれほど日本に関する記述が多く、日本をベースに自国を考えるのか」だ。しかも視点がゆがんでいる。『どうしても“日本離れ”できない韓国』を読んで理由が分かった。近代において35年間朝鮮半島を支配していた“日本”を乗り越えられていないのだ。

「日本隠し」とは面白い。“道徳的優位性”に立ちたいが故に、日本のプラス、貢献を隠す様を指すらしい。しかしそれが今の韓国経済の苦境の一因だ。この点にもう少し触れて欲しかった。もっとも黒田氏は「韓国のしたたかさに日本も学ぶべき」と説く。確かに。「ただ近いという理由だけでアジアの国々(特に韓国、中国)と仲良くしなければならない」という意見に黒田氏が反対しているのには賛成できる。

 日本はグローバルな存在であれば良い。ヒト、モノ、カネは世界を駆け巡っている。地理的条件の重要性は観光ぐらい。中韓を含めアジアからは山ほど観光客が来ている。韓国はいつも「日本、日本」でうるさい。しかし日本は少し韓国を突き放して付き合うべきだ。

新潮社 週刊新潮
2015年11月26日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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