「友ラン」×「旅ラン」【自著を語る】

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楽しく、走る。

『楽しく、走る。』

著者
平井 理央 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103393115
発売日
2015/05/29
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「友ラン」×「旅ラン」【自著を語る】

[レビュアー] 平井理央(フリーアナウンサー)

 小学校のころ体育の成績は、良くて「ふつう」か「もうすこしがんばりましょう」だった。走るのも遅いし、よく転ぶし、どんくさい少女だったと思う。そんな自分が、まさかマラソンについての本を書くなんて、人生なにが起こるか分からないものである。

 初めてフルマラソンを走ったのは、フジテレビアナウンサーとして、スポーツ番組の企画で東京マラソンに挑戦したときのことだった。当時は忙しさにかまけ、全く運動をしていなかった。その上、中学のマラソン大会での7キロが人生最長の走行距離だった私は、多くの方々にサポートしていただきながら、4カ月の猛特訓の末、4時間台での完走という目標を達成した。真面目な人なら、そこから走ることに目覚め、年に一回はフルマラソンを走り、今はサブフォー(3時間台で走ること)……とかなりそうなものだが、元来ズボラであり、三日坊主体質の私は、あまりの満足感と練習からの解放感に、その後、ぱったりと走ることをやめてしまった。

 あれから5年、東京マラソン出場の抽選倍率は年々上がり、街中でジョガーの姿を見かけない日はないくらい、東京の日常にランニングが溶け込んできても、私が再び走り出すことはなかった。ただ、2度の引越しの際には、ランニングシューズを捨てずに新居へ持っていったし、人から「まだ走ってるの?」と聞かれるたびに、胸には鈍い痛みがはしっていた。そんな忘れられない元恋人のような存在となっていたランニングと、私が再び交わることになったきっかけ、それが「ニューヨークシティマラソン」だった。

 ニューヨークシティマラソンは、世界で一番の市民マラソンであり、最高のコースと観客に出逢える――東京マラソンの時にお世話になったランニングコーチがそう話していたのを、元々ニューヨークという街が好きだったこともあり、ずっと覚えていた。

 前職のフジテレビを退社して、時間も体力も余裕ができた2013年の年末のこと。もし、このニューヨークシティマラソンを練習も含めて、楽しめたら……そんな想いがスタート地点となり、私は再び走りはじめることとなった。

 テーマは無理しないで、楽しむこと。シンプルすぎて恥ずかしいが、それができたら、大げさにいえば、人生をより楽しめるアイテムをまた一つ、手にできるんじゃないかと思った。

 そのために、今回は友人を巻き込んで一緒に走ろうと企てた。誰かと一緒なら、自分ひとりでは気づけないランニングの「楽しさ」と出会えるのではないかと、大学時代からの友人Nを誘ってみた。Nは、中学の頃、ニューヨークに住んでいたこともあり、ニューヨークが大好きな子で、私とは過去2回共にニューヨークを旅している。一回目は大学の卒業旅行で、二回目は29歳のクリスマスに。ノリもよく、生活のメリハリの感覚が似ているNとなら、イケる! そんな思いつきから誘ったら、ふたつ返事でオッケーをもらえた。

 ちなみにNは、私以上のインドア派で、二人とも筋肉の無さでいうと、どっこいどっこいである。

 彼女がいたことで、一緒に汗を流す心地よさや、トレーニング後のご褒美といった、ワクワクすることが急に増えていった。ランニングしながら沢山の話ができたことも、楽しかった。カフェや飲み屋でのおしゃべり以上に、自分の本心を素直な言葉で伝えられるような気がしたし、どんどんポジティブな会話に自然となっていくところに、ランニングの新たな魅力を感じた。

 ニューヨークと女友だち、このふたつが大きなモチベーションとなり、私は徐々に走ること自体にもハマっていった。そして、友だちと走る「友ラン」と、旅先の街をランニングする「旅ラン」というかけ算が、想像以上に楽しく、このスタイルをもっと広められたらという思いが強くなった。

 ズボラな自分でも続けられるトレーニングはあるのか、ニューヨークの最新のランニング事情、そして世界一といわれるニューヨークシティマラソンの全貌を記した一冊。ランニングの入門書としては、ハードルが低すぎるかもしれないが、幅広くランニングを楽しむ人たちのヒントになれたらと思っている。

新潮社 波
2015年6月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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