これからの建築は、その基盤となる社会はどこへ向かうのか-。東日本大震災を機に、そんな考察を重ねてきた2人の対談や小論をまとめた既刊に「新国立競技場問題」をめぐる章を加えた。白紙撤回が決まる前の対談だが、当初のザハ・ハディド案への抵抗が、単純なコスト批判などではなく、いまも被災地で建設が続く巨大防潮堤のような〈前世紀の近代主義〉への異議申し立てだったことがわかる。競技場が今後どうなるかは不明だが、伊東豊雄氏によるコンペ案や修正案は記憶しておいていい。含蓄のある言葉たちが、読み手を深い思索にいざなう。(ちくま文庫・780円+税)
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2015年11月15日 掲載
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