【児童書】『チャーちゃん』保坂和志作、小沢さかえ画
[レビュアー] 篠原知存(ライター)
■「死」の新しいイメージ
最初のページは、みずみずしい草木のアップ。モノローグがはじまる。
〈ぼく、チャーちゃん〉
2ページ目、草原に座っている猫の後ろ姿。物語が立ち上がる。と同時に、その言葉に驚かされる。
〈はっきり言って、いま死んでます〉
はっきり言われても。大丈夫か。いや死んでるんだから大丈夫じゃないか…。ドキドキしつつ、ページを繰る。軽やかなことばと、明るくやわらかな絵が、「死」ということについての、新しいイメージを紡いでいく。温かい気持ちになっていく。
ふと、祖父が急死したときのことを思い出した。幼かった私は事実を理解できないまま、しばらく過ごした。悲しみはなく、もう会えないという違和感をもてあましていた。いま、小学1年の長男が、毎日のように「死にそう」とか「死んだ」とか口走っている。どんなイメージなんだろう。この本を一緒にながめてみよう。(福音館書店・1400円+税)
篠原知存