世にも奇妙な君物語 [著]朝井リョウ

レビュー

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世にも奇妙な君物語

『世にも奇妙な君物語』

著者
朝井 リョウ [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784062198240
発売日
2015/11/19
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

世にも奇妙な君物語 [著]朝井リョウ

[レビュアー] 杉江松恋(書評家)

 そして、みんな薄くなった。

 本書を読み終えた瞬間、そんな言葉が脳裏をかすめた。ああ、作者はこんな風に現代を見ているのだと思ったのである。あまりにも一面的で、めくっても裏には何もない。そんな薄っぺらな世相に、冷ややかな笑いという調味料をふりかけ、どんでん返しという調理法を駆使して、朝井は五つの物語を作り上げた。当然、味付けは辛口だ。あと、ちょっと苦い。

 五つの収録作のうち「リア充裁判」は、全国民に「日本人らしい豊かなコミュニケーション能力」を求める法律が制定された近未来のお話だ。時折、無作為にサンプルが抽出され、能力向上に努めているかを審査される。その「リア充裁判」の不合格者には、矯正のための課題が与えられるのだ。谷沢知子の姉も、裁判で不合格になった一人だった。そして知子自身にも声が掛かる。

 SNSへの参加がほぼ常識になり、誰もがネット社会で自分の私生活を公開するようになった状況がデフォルメして描かれる。ただし、そのアイデアだけで書かれた小説なら、「あるある」と消費されるだけで終わるだろう。慎重な書き手である朝井は、この物語に二重底の結末を準備した。ドラマが終わったあとに用意された情景が、忘れがたい後味となる。

 モンスターペアレントと呼ばれる保護者対策に汲々とする幼稚園教諭たちの話「立て!金次郎」も同様の趣向である。ネットニュース配信会社に勤める女性を主人公とする「13・5文字しか集中して読めな」では、凍りついた時間の中で物語が終わる。どの作品も結末が印象的だ。読者の期待を裏切るやり方は非情ですらあり、被虐的な快感さえ覚える。

 題名から判るとおり有名なドラマ番組にオマージュを捧げる作品でもある。巻末の「脇役バトルロワイアル」は読むと配役まで浮かびそうな凝り方だ。ただし、映像化はすこぶる難しそうだが。

新潮社 週刊新潮
2015年12月3日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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