『灰色の犬』
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灰色の犬 [著]福澤徹三
[レビュアー] 若林踏(書評家)
かつて県警四課のエースと呼ばれながら、情報漏えいの疑いでいまは生活安全課に身を置く刑事、片桐誠一。拳銃摘発の実績を上げるためのやらせ捜査を命じられた彼は、組織で窓際に追いやられているヤクザの刀根に捜査協力を頼もうとする。一方、誠一の息子、片桐遼平は090金融に手を付け、借金地獄にはまってしまう。
『すじぼり』で第十回大藪春彦賞を受賞した著者が挑む、新たな骨太クライムノベル。組織内部の腐敗と暗闘を描く警察小説であると同時に、格差社会に組み込まれてしまう若者の悲劇を描く社会派小説でもある。どん底でもがき、抵抗する弱者の叫びが聞こえてくるような物語だ。