さよならアリアドネ [著]宮地昌幸
[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)
同じ時間を何度も繰り返す“ループもの”は昔から人気が高く、漫画やアニメを含め無数の例がありますが、中でも本書は極めつきの変化球。なにしろ、33歳の主人公(アニメーター)に未来の自分から与えられた任務は「15年後の8月23日を72回繰り返すこと」。最悪の老後を回避すべく、15年後の自分に成り代わって夫婦の危機に立ち向かえ! かくて、吉祥寺を舞台に、前代未聞の中年SFドラマが始まる。
著者は「亡念のザムド」「伏」のアニメ監督。帯には「結婚したらパートナーに絶対読んで欲しいタイムトラベルものNo.1」とありますが、こんな小説、妻には絶対読ませたくない!