市川崑と『犬神家の一族』 [著]春日太一

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市川崑と『犬神家の一族』

『市川崑と『犬神家の一族』』

著者
春日 太一 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
芸術・生活/演劇・映画
ISBN
9784106106446
発売日
2015/11/16
価格
778円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

市川崑と『犬神家の一族』 [著]春日太一

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 小林秀雄や蓮實重彦あたりを免罪符に掲げ、悪文をコネくり回す輩の珍しくないのが音楽評や映画評だったとして、でも、『モオツァルト』や『映像の詩学』の縮小劣化コピーが許される時代は終わった。それを教養主義の衰退だ反知性主義の台頭だと嘆く気にならないのは、音楽や映画をわかりやすく面白く、そして深く語れる書き手がちゃんと登場してきているから。

 今回登場の春日太一は映画史の研究者にして新たな見巧者。『時代劇は死なず!』(集英社新書)以来、見事な仕事続きで、新著も例外じゃない。TVに出演しての語り(WOWOWの市川特番と「犬神家」特番)がベースで、巻末にインタビュー(石坂浩二)まで付いてるというから安直な本作りを心配したけれど、完全な杞憂。「犬神家」に先立つ「オリエント急行殺人事件」との比較が勝手に脳内で始まっちゃうくらい、大いに楽しめた。

 引用が難しい音楽や映像の批評は、対象になる作品を聴いたこと、観たことのない人が読んでもピンときにくいのが難点ながら、この著者は映画やドラマの紹介が巧み。一度観たブツならすぐ頭に浮かぶし、未見の場合でも観たような気になれて、さらには、褒められてない作品でも観てみたくなる。「犬神家」のリメイク版まで持ってたワタシも別の市川作品のDVD、今回さらに4枚買い込んじゃったから、そのあたりが難点といえば難点ですが。

新潮社 週刊新潮
2015年12月10日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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