【聞きたい。】写真家・中里和人さん  『lux WATER TUNNEL LAND TUNNEL』

インタビュー

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lux

『lux』

著者
中里 和人 [著]/twinkle [訳]
出版社
ワイズ
ISBN
9784898302934
価格
4,104円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】写真家・中里和人さん  □『lux WATER TUNNEL LAND TUNNEL』

[レビュアー] 藤井克郎

中里和人さん
中里和人さん

■素掘りトンネルはさまざまな交点

 もう10年ほど千葉県の房総半島や新潟県の十日町市周辺に通って撮りためた素掘りのトンネルの写真を収めた。タイトルの「lux(ルクス)」はラテン語で光を意味するが、確かに暗闇の中で織りなす光と影のコントラストが印象的だ。

 「闇の中にしばらく身を置いていると光に敏感になる。出入り口から差し込んでくる光は神々しく、トンネルというのは光を見るのに最高の装置なんじゃないかと感じますね」と「トンネル愛」を熱く語る。

 すでに訪ねたトンネルは150本を超える。どれも人間によって掘られたもので、いびつな穴の形にその苦労の跡が見てとれるのが面白いという。

 「人と自然との接点でできた景観で、両者の共同作業というところに意義深さを感じる。現代の構造物とは対極にあるつくり方で、それが今も見えるということは、何か未来に向けてのサインなんじゃないかと思った。まちづくりやライフスタイルに反映できれば、われわれの暮らしももう少しひだが深くなっていくような気がします」

 人と自然との接点は、これまでも写真のテーマにしてきた。デビュー作の「湾岸原野」は、地盤が固まるまで放置され、一瞬ながら天然に戻っていく東京湾の埋め立て地を見つめた。セルフビルドの小屋を全国に訪ねてその表情をとらえた「小屋の肖像」も、作り手の個性が構造物に反映されるという点で、素掘りトンネルに通じるものがある。

 「社会的な風景が自然に侵食されていく、その境界上の景観が僕のテーマでもあり、その中で見えてくる光って何だろうという思いがあった。素掘りトンネルには、光と影の境界、社会と自然の境界と、さまざまな交点がある。非常に複雑で深い景観的な体感が、房総半島だったら東京から車で2時間くらいの身近なところでできるというのが、とても面白いと思います」(ワイズ出版・3800円+税)

 藤井克郎
                   ◇

【プロフィル】中里和人
 なかざと・かつひと 昭和31年、三重県生まれ。法政大学卒。写真集に「湾岸原野」「キリコの街」など。東京造形大学教授。

産経新聞
2015年12月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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