性のタブーのない日本 [著]橋本治

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性のタブーのない日本

『性のタブーのない日本』

著者
橋本 治 [著]
出版社
集英社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784087208108
発売日
2015/11/17
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

性のタブーのない日本 [著]橋本治

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 絵巻や浮世絵に見られる、性器をふくむ裸体丸出しの表現。歌舞伎や人形浄瑠璃のエロチックな肉体表現。日本はその歴史全体をつうじて、世界にもまれな「性表現大国」である。

 神話によれば、そもそも日本は男女の神の性交によって生まれた国だ。絶対的な力をもつ唯一神がすべてを創造した国とは違って、性交ははじめからタブー視されてはいない。たとえば、平安貴族にとって顔をむりやり見られることはかなりの恥辱だが、性器はぺろんと見せても平気、性交も「暗くなったらまあ、ふつうにすること」である。つまり、むりに顔を見たらレイプだが、性交によるレイプは成立しにくい。また江戸時代の「遊女」は、性的サービスの有無によって定義されるものではない。性は、人間のもつあらゆる面と同列であり、したがってとくに猥褻というわけではない。

 日本の性表現の歴史を、著者は素敵な速度で駆け抜ける。明治維新以後の日本人にしみついた「猥褻」の感覚で江戸時代以前の性表現を見ると、本筋を見失った解釈が生まれがちだが、著者はそれらをつぎつぎしりぞけながら快調にすすむ。キーワードは「そういう日本だったんだからしょうがないじゃないか」。人間の身体にふつうにそなわった部位や、誰でもするような日常的行為の意味づけなんかに、あまりやっきになるのはばかばかしいということですね。

新潮社 週刊新潮
2015年1月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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