『人生最後のご馳走 : 淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院のリクエスト食』
- 著者
- 青山, ゆみこ, 1971-
- 出版社
- 幻冬舎
- ISBN
- 9784344028265
- 価格
- 1,430円(税込)
書籍情報:openBD
【聞きたい。】青山ゆみこさん 『人生最後のご馳走』
[文] 杉山みどり
■希望もたらすホスピスの食事
明日は食べられないかもしれない-。余命わずかと宣告された末期がん患者14人がリクエストした食事と、彼らを支える人たちのルポルタージュを著した。ある人は「亡き夫に作ってあげられなかったポタージュスープ」、またある人は「家族で囲んだすき焼き」。食を通して患者らの人生を描く。
大阪にある「淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院」。ここでは週に1度、患者からリクエストされた食事を一人一人に提供している。
食事について語る患者らは、楽しかった思い出がよみがえるのか、生き生きとしていた、という。家族に聞くと、それまで全く食事を受け付けなかったのが、このホスピスに転院して「食欲も出て、元気になった」と口をそろえた。
リクエスト食に限らず、食事にこだわり、盛りつけや器にも気を配る。「刺し身は細かく包丁を入れる」「お好み焼きの豚肉はミンチに、下ゆでしたキャベツは細かく刻む」…。料亭やホテルで腕をふるった料理人が、それぞれの状態に合わせて調理する。
「大切なのは、患者とのコミュニケーションであり、食によってもたらされる希望であり、『私はあなたのことを大切に思っている』と伝えること」。そう話す医師やスタッフらの言葉は信念に満ちていた。
本書が完成したとき、取材した患者はすでに他界。「主人が笑っていたのを思い出す」「取材中、本当に楽しそうにしていた」と、本を手にした遺族の言葉が心に響いた。
取材を通じ、ホスピスに対するイメージが大きく変わった。このような対応が可能な施設は国内でも数少ないという。
それにしても、2年間の取材はつらくなかったのか。「余命いくばくもないという現実を忘れるほど、みなさんは穏やかで朗らかだった。最期まで生ききったことを伝えたい」(幻冬舎・1300円+税)
杉山みどり
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【プロフィル】青山ゆみこ
あおやま・ゆみこ 昭和46年、神戸市生まれ。甲南女子大学卒。出版社勤務を経て、平成18年、フリーに。単行本の編集・構成などを手掛けている。