【聞きたい。】青山ゆみこさん 『人生最後のご馳走』

インタビュー

4
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【聞きたい。】青山ゆみこさん 『人生最後のご馳走』

[レビュアー] 杉山みどり

青山ゆみこさん
青山ゆみこさん

■希望もたらすホスピスの食事

 明日は食べられないかもしれない-。余命わずかと宣告された末期がん患者14人がリクエストした食事と、彼らを支える人たちのルポルタージュを著した。ある人は「亡き夫に作ってあげられなかったポタージュスープ」、またある人は「家族で囲んだすき焼き」。食を通して患者らの人生を描く。

 大阪にある「淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院」。ここでは週に1度、患者からリクエストされた食事を一人一人に提供している。

 食事について語る患者らは、楽しかった思い出がよみがえるのか、生き生きとしていた、という。家族に聞くと、それまで全く食事を受け付けなかったのが、このホスピスに転院して「食欲も出て、元気になった」と口をそろえた。

 リクエスト食に限らず、食事にこだわり、盛りつけや器にも気を配る。「刺し身は細かく包丁を入れる」「お好み焼きの豚肉はミンチに、下ゆでしたキャベツは細かく刻む」…。料亭やホテルで腕をふるった料理人が、それぞれの状態に合わせて調理する。

 「大切なのは、患者とのコミュニケーションであり、食によってもたらされる希望であり、『私はあなたのことを大切に思っている』と伝えること」。そう話す医師やスタッフらの言葉は信念に満ちていた。

 本書が完成したとき、取材した患者はすでに他界。「主人が笑っていたのを思い出す」「取材中、本当に楽しそうにしていた」と、本を手にした遺族の言葉が心に響いた。

 取材を通じ、ホスピスに対するイメージが大きく変わった。このような対応が可能な施設は国内でも数少ないという。

 それにしても、2年間の取材はつらくなかったのか。「余命いくばくもないという現実を忘れるほど、みなさんは穏やかで朗らかだった。最期まで生ききったことを伝えたい」(幻冬舎・1300円+税)

 杉山みどり

                   ◇

【プロフィル】青山ゆみこ 

 あおやま・ゆみこ 昭和46年、神戸市生まれ。甲南女子大学卒。出版社勤務を経て、平成18年、フリーに。単行本の編集・構成などを手掛けている。

産経新聞
2016年1月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加