明文堂書店石川松任店「恋愛ミステリの極致!」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
本書には「能師の妻」「野辺の露」「宵待草夜情」「花虐の賦」「未完の盛装」の五つの艶やかな短編ミステリが収録されている。傑作揃いだ。驚愕の結末を自然なものと感じさせる流麗な文章に酔いしれて欲しい。
明治・大正時代を経ていない作者と明治・大正時代を経ていない読者の間で形作られた幻想の明治・大正の情景(昭和を舞台にした時効ミステリの「未完の盛装」はすこし例外的ですが・・・・・・)が、まるで真実かのように頭にぱっと広がる。優れた作品が持つ、フィクションの魔術である。本書が気に入った人は、代表作『戻り川心中』も好きになると思うので、そちらも、是非。